第271話 百枚もあると、なかなか終わりません

文字数 1,059文字



 それからの一時間は阿鼻叫喚だった。
 いい意味で。
 つまり、幸運マックスが作用して、次から次へと、出てくる。出てくる。二等、三等、五等、四等、一等も出た。八割当たりだ。
 ツボ、ツボ、ツボ。たまに秘伝書のラッシュ!

 なんでだ?
 ガラポンってのは、箱のなかに入ってる当たり玉の数が調整されてる。当たりの本数には限度があるからね。ハズレが九割とかが普通だろう。
 こんなに連続で当たりが出るはずはないんだけど。

「お客さまは強運でございますですなぁ。じつは本日、なにやら景気がよろしくてございましてな。昼のうち、抽選大人気だったのでございますです。いやはぁ、来るわ。来るわ。みなさん、ハズレばっかりでございましたけどなぁ」

 そうか! つまり、僕が三千万を使って傭兵呼びしたんで、あれこれ買い物した人たちがいっせいに抽選して、それがまた、ほとんどハズレを引いた。よって、ガラポンの箱のなかには当たりばっかりが残ったってことか。
 三千万、ムダ使いじゃなかったんだ。
 じゃあ、僕は僕のお金たちの残した報酬を、たっぷり味わおうかなぁ。

 ガラガラガラガラ。ガラポンポン!
 おおっ、出るねぇ。
 ツボ、ツボ。装飾品。ツボ。秘伝書。

「——あッ!」
「カアーッ!」
 ゆらり。

「おばあさん! 赤いよ?」
「おばあさんではございませんです。大合成魔女でございますです」
「ただのバイトだって言ってたよね?」
「カアーッ! 気にしてはなりませんでございます」

 えへへ。万能のカギ(隠し扉)を手に入れてしまった。これ、牢屋以外の扉もあけられるようになるよね。
 まだ牢屋もあけてなかったけど、ストーリーの進行上、必ず必要にはなってくるはずだ。

「わ〜い。いっぱい当たった〜」
 ゆら〜り。

 どのアイテムも貴重で嬉しいけど、とくにありがたいのはツボだ。

 たしか前にスズランが言ってた。
 職業のコツを封じこめたツボがあって、それを使うとモンスターでも職業につけるかもしれないって。

 しかもだ。ただ職業につけるだけじゃない。この三種類って、さっきワレスさんから聞いた後衛援護スキルをマスターするっていう、弓使いになる前の基本職だ。

 この三種類のツボを使えば、本来はその仕事につけない人も盗賊や戦士や僧侶になれて、弓使いになれる。後衛援護スキルを誰でもマスターできる。

 ぽよちゃんにだって後衛援護ができるようになるんだ!

「へへへ。ありがとうございました〜。また抽選券がたまったころに来ますね〜」

 貰うもの貰ったことだし、次はカジノだー!
 この勢いのまま一攫千金、当てたいなぁ。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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