第59話 テディベアの王様

文字数 1,083文字



 王冠をかぶったピンク色の巨大なクマのぬいぐるみ。
 それが、テディーキングだ。
 僕らの前に小山のようなラブリーテディーが牙をむいた。
 どうでもいいけど、可愛いな。

「ああっー! 合体するの、子グマちゃんのほうだったァー。てっきり、あのゲームに忠実にスライムのほうだと思ったのに!」

 ハハハと、爽やかな笑顔で猛が笑う。
 いや、今、そんな笑われたって。

「だから言ったじゃないか。テディーキングには気をつけろよって。あいつ、瀕死(ひんし)になると、いっきに仲間呼びするときあるから」
「いやいや、それならそうと言っといてよ? 合体してからじゃ遅いよ?」
「かーくん。ガンバレ」

 もう、なんて無責任な兄なんだ。
 こうなれば戦うしかないのか。
 デカイ。デカイよ。ビルなみとまでは言わないけど、二階建ての一軒家くらいの大きさはある。

 合体直後は動けないらしい。
 幼児が指をしゃぶる仕草でこっちを見て、僕らのターンを待っている。

「えーと、一ターンめの僕とシャケとぽよちゃんの行動はとばされちゃったわけか。じゃあ、次が二ターンめってこと?」
「そうですね。次の戦闘からは、四回行動できる僕がまっさきに子グマを倒します。今はじゃあ、HPも防御力も高そうですし、呪文を使いますね?」
「一段階は上げたほうがいいね。僕ら防御力は上がったけど、攻撃力がものすごく強いのは、ロランだけだし」

 ロランはうなずいて叫んだ。
「みんな、がんばろ〜」

 o(^o^)o
 この笑顔だ。
 蘭さんは顔文字の表情作るのウマイなぁ。

 そのあと、ドラゴンテイルが三回舞った。テディーキングに一回40〜50のダメージを与えた。が、クマの王様は倒れない。目に涙を浮かべているが、倒れない。
 やっぱり強いな。
 巨大化させてはいけなかった。

 三村くんが鉄のブーメランをなげる。
 スコンと可愛いクマちゃんの耳が、かたっぽ切りおとされた。
 ああッ、残酷ぅー!

 テディーキングは大泣きだ。
 あと、どのくらいのHPが残ってるんだろう?

 僕の攻撃で倒れてくれるといいんだけど……。
 なんか、これまでのパターンで行くと、たいてい反撃をくらうのは僕。

「破魔の魔法でもいい?」
「いいですよ。一ターンやりすごせば、次の僕の攻撃で倒せるでしょ?」

 じゃ、遠慮なく。

「破魔の剣〜!」

 ちっさい炎が泣いてるクマちゃんの頭上にパラパラと降った。
 あっ……マズかったかも?

 テディーキングのつぶらな瞳が燃えている。クマちゃんの怒りに火がついたー!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み