第344話 詩神のハープの能力

文字数 1,347文字

 残りはブッキーたちばっかりだったから、次のターンに軽く殲滅(せんめつ)できた。

 百体もブッキーがいたせいで、なんか貰えた経験値がスゴイ。経験値10700って、ボス戦より多いよ。
 ケロちゃんとシルバンがガンガン、レベル上がっていく。たまりんも一つ上がった。

 それに宝箱だ。
 僕の幸運値のせいで、ほぼ全部の敵が宝箱ドロップする。百個、魔法カードを回収するのは、なかなかの手間だった。ブッキーはバサバサふるとカードが落ちてくるんで、まだラクなほうか。

「えーと。ダディロンさんが六十体倒したので、六十枚、魔法カードあげますよ」
「わしはカードはいらん。それより、そのサラマンダーの石像をくれ。くだいて、玉鋼を作るときに使うから」
「はあ。いいですよ」

 ああ……石化されちゃうと体ごと持っていかれるのか。モンスターとは言え、ちょっとかわいそう。
 ごめん。サラちゃん。さらば!

 サラマンダーの像をダディロンさんがカバンに押しこむのを、僕は黙って見守った。

「それにしても、なんでブッキーの魔法攻撃が途中で消えたんだろう? あれのおかげで僕がまにあったんだよね」

 じゃないと、最初の数発をくらった時点で、ケロちゃんは倒れてた。

 ゆら〜り。
 ん? たまりんがやけにユラユラしてるな。

「あっ! もしかして、月光のセレナーデの効果なんだ?」

 ゆらり!

「へえ。月光のセレナーデって攻撃魔法のダメージを吸収してくれるんだね」

 どれどれ。長押しで詳細説明を見てみると、奏者の知力の三倍までの攻撃魔法ダメージを吸収するバリアを張るって書いてある。
 たまりん、知力だけは高いもんね。
 さっきレベルアップしたから、今の知力は190だ。レベルアップ前でも182だったかな? その三倍だから、570。

「そうか。魔法ダメージじゃないと吸収しないのか。ブレス攻撃には無効なんだね」

 そこは注意しとかないな。
 それにしても詩神のハープっていうのは、なんてありがたい武器なんだ。

 ついでに見たけど、小悪魔のワルツは、敵全体に防御力無視でハープの攻撃力ぶんの固定ダメージ。プラス50%で魅了の効果か。
 これは後衛では、たぶん発揮されなくなる。なぜなら、後衛でできることは補助魔法と回復のみだからだ。弓使いだけが後衛からでも攻撃できるっていうし。オマケの魅了だけは効果あるかも。

 んで、詩神のバラードってのが、もともとのこのハープに付属の装備魔法だよね?

 見ると、詩神のハープにセットされたすべてのハープの装備魔法の効果、とある。
 すべての効果……。
 つまり、月光のセレナーデと、小悪魔のワルツと、海鳴りのラプソディーが一ターンで発現するってことか。
 それはすごい。
 しかも、今後もセットしていけば、その数は増えるんだ。

「助かったよ。たまりん。ありがとう」

 ゆら〜り。

 あーあ。たまりんがしゃべれたらなぁ。ユラユラかげんで、なんとなく感情はわかるんだけどさ。

「じゃあ、次からはサラマンダーが出たら、まっさきにやろう。ここは火属性のモンスターが集中してるみたいだから、いっしょに出てこられるとやっかいだからね」

 いきなり大苦戦してしまった。
 この洞くつは強敵ぞろいなのかもしれないなぁ。

 僕らは悪のヤドリギの秘密をさぐるために、ダンジョンの奥深くをめざす……。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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