第161話 ゴーレム戦! 2

文字数 1,186文字



 たまりんの回復魔法。
 ナッツの顔色が戻る。
 すると、ナッツは短剣を逆手ににぎってヤツらに向かっていった。

「ナッツ! 帰ってくるんだ。ゴーレムの攻撃をかわさないと!」

 正直、ナッツの攻撃にはあまり期待していない。せめて身を守る行動をとってダメージを受けないようにしてくれれば、僕の攻撃、たまりんの回復で戦闘を続けられるんだけど。

 言わんこっちゃない。
 ナッツの短剣はゴーレムのお腹に、ちょびっと先端だけ食いこんで、小さな穴を石の体に作ったにすぎない。

 ゴーレムが腕をふりあげる。
 また、あの攻撃が来る。

 僕は思わず走っていた。
 ナッツの体を抱きあげ、ゴーレムのフルスイングアームから遠ざけようとした。だけど、一瞬遅く、二人とも石の剛腕に張りたおされてしまう。

 意識が遠くなっていく。
 ああ、もう終わりか。
 ここまでか。

 ん? いや、なんで?
 体が勝手に動くぞ?
 あっ、そうか! たまりんの憑依だ。
 たまりんが僕のなかに入って、体をあやつってるんだ。

 僕がブーメランをなげる。
 正確に記すなら、たまりんにあやつられた“僕”がブーメランをなげるのを、僕は朦朧(もうろう)としながらながめた。

 バッキーンッ!
 と、ものすごい音がして、ゴーレムの胸が半分くらい、くだけ落ちた。
 グレート所長も「ブッヒーッ!」と悲鳴をあげて床に倒れる。見ると、目をまわしている。

 ……勝った?
 もしかして、勝ったのか?
 ボスにしては意外とHP少ないモンスターだったんだな。よかった。

 BGMが戦闘音楽じゃなくなったから、たしかに僕ら勝利したんだと思う。
 しかし、そこから続いてイベントが始まってしまった。
 一定量のダメージを敵に与えると、いやおうなく決められた勝敗になってしまう戦いだったようだ。

 戦闘に勝ったので、憑依がとけて僕の体から、たまりんが出てきたときだ。
 グレート所長が目をさまし、まだ失神してる僕をわしづかみにした。
 失神してるのに見えてるのは、なんでだろ? 夢か? そうか。夢だからなんだな?

「ブッヒッヒ……こうなれば、コイツも魔物に変えてくれるわ。ゴーレム! おまえはそのガキをやっつけてしまえ! えーい、この火の玉め。ジャマするな! 変身ビーム!」

 なんじゃそりゃ?
 変身ビームって、そんなん使えるなら、機械に入れる意味あんの?

 意味はあった。
 たぶん、所長の使う変身ビームは戦闘魔法の一種で、戦闘中の数ターンだけ、相手の姿を変える効果だ。
 機械に入れて古代魔法にかけたときほど長期間に渡って、魔法の効果が持続しない。

 なんでそれを知ったかというと、変身ビームをかけられたたまりんの姿が、数分間だけ変化したからだ。
 青白い火の玉から、目の覚めるような美少女へ——
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み