第22話 五千円獲得〜

文字数 829文字


 蛇のような竜のようなモンスターの首が、ズルズルと切り口にそってすべり、そのまま床に落ちる。
 石畳の床にあたって、ポキンと牙が一本折れた。牙だけでも四、五十センチはある。見ため象牙だ。

 ワレスさんはそれをひろって、首からさげた銀の懐中時計のふたをあけると、そのなかに牙を押しこんだ。

 えっ? ムリでしょ。入らないよと思ったものの、ちゃんと入った。入るんだ。そうか。それが、あなたの四次元ポケットなんですね。

「おれは、これだけでいい。金はやるよ。旅費が必要だろう?」
「竜の牙は武器素材ですからね。今の僕らが持っていても、しかたないものだ」と、蘭さん。

 そうなんだ。武器素材ってことは売るか、武器を作るかってことか。

 それにしても五千円もの大金、どこに? いや、そうだった。服を着てないモンスターはお腹のなかだった。

「えーと……お金は、どうしたら……」

 口から入るのは、ちょっと……しかもその口じたい、すでに胴体とひっついてないし。切り口から入るのは、あまりにもグロい……。

 すると、ワレスさんが黙って竜の体の中心あたりを剣で切りさいた。それから乱暴に編みあげのブーツをはいた足で何度も蹴った。

 ビュッと何かがドラゴンの体内から押しだされてくる。
 うーん、お金儲けがどんどんハードになってくる。

 血まみれの五千円札!
 使えない。
 あとで洗ってアイロンかけなくちゃ。

 と思って、よくよく見たら、それは見なれた五千円札ではなかった。見たことのない金色の硬貨だ。まんなかに5千って書かれて、表には誰かわからないけど女の人の横顔が浮き彫りになっている。そっか。この世界には紙幣はないのか。たしかに、モンスターからいちいち、この方法で取得した紙幣を洗ってたら、すぐにやぶれてしまう。

「これが……五千円」
「そうですよ。かーくんさん、見たことないの?」
「すいませんねぇ。貧乏人なもので」
「ふうん」

 王子様にはわからない悩みか。

 僕は五千円硬貨を、ありがたく財布にしまいこんだ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み