第285話 オリヤの村で
文字数 1,641文字
北東にむかって草原を歩いていくと、やがて南北に走る街道に出た。
どうやら隣国ウールリカとシルバースターを結ぶ道のようだ。
オリヤもウールリカに近いらしいので、街道に乗って馬車は進む。
道々はキツネッコやガブガブ草ね。
キレイな蝶のモンスターも出てきた。虫嫌いの蘭さんが青い顔しながらも逃げださずに戦っていた。
たまに以前、ボスで出てきたアナコンダの色違いが出現する。黄色と黒のシマシマもよう。ブンブンとセットで出てくることが多い。工事現場の危険注意コンビだ。
「わ〜い。今日もだいぶ吸えたなぁ。レベルも上がったし、早くほかの得意技も使えるようになってほしいんだけどなぁ」
僕の“泣きマネ”と“逃げ足の速さ”は、まだ使えない。これまでの得意技がネーミングのわりにチートだったので、ちょっと期待してるんだけどなぁ。
ちなみにレベルは24になった。
その直後の数値がコレ。
HP300(270)『181』、MP240(216)『68』、力102(92)『36』、体力103(93)『40』、知力121(109)『3』、素早さ100(90)『32』、器用さ113(102)『14』、幸運99998(89999)。
そして、さっきからの戦闘でつまみ食いして、今の数値がコレだ。
HP330(297)『211』、MP255(230)『83』、力110(99)『44』、体力107(97)『44』、知力121(109)『3』、素早さ109(99)『41』、器用さ113(102)『14』、幸運99998(89999)。
職業が遊び人なんで、すべてのステータスにマイナス10%の補正がついちゃってるのが残念でならない。
早く遊び人を卒業したいもんだ。
「あっ、かーくん。あれがオリヤ村じゃないですか? 屋根が見える」
「ほんとだ」
森のなかに小さな家がポツポツと建っている。木造の家が風景のなかに溶けこんでいる。
村のなかを歩く人たちはウールの織物の民族衣装を着ていた。じゅうたんっぽいとか思っちゃいけない。うん。
「こんにちは。この村に織物名人がいると聞いて来たんですが、ご自宅はどちらですか?」
蘭さんが折り目正しくたずねる。
けど、村人は、どの人も「うーん。うーん」とうなるばかりだ。
なんだろなぁ?
また何かあったのかなぁ?
RPGの宿命とは言え、行くさきざきで必ず問題が起こるんだよな。
そろそろダンジョンに入らないといけないころなんだろなぁ。
「あの、すいません。織物名人の家はどこですか?」
僕は腕組みして寝てるみたいなおじさんの耳元で叫んだ。
おじさん、やっと気づいてくれた。
ハッと目をさましたふうで僕を見る。
「やっ、すまん。すまん。じつは北のウールリカから、もう長いことウールが届かなくなってしまったんでな。村人みんな困りはててるんだよ」
「ウールリカは魔物に襲われたって話ですよ。ウールリカから逃げてきたって人が言ってました」
「そうか。やっぱり、そうなのか。とすると、困ったことになった」
「何がです?」
「じつはその織物名人がたしかめに行くと言って、国境の関所に向かっていったんだ。かれこれ二日になるが帰ってこんのだよ」
「ええー! なんで止めなかったんですか? まさか一人で?」
「織物名人のオンドリヤさんはたいそう気短かで、言いだしたら聞かない人でなぁ」
なるほど。今度は名人を助けに行かなくちゃいけないのか。
しょうがない。馬車のためだ。
いや、人命救助だ。
「わかりました。僕らが探しに行きます。関所っていうのは、どのへんなんですか?」
「森のなかを北にむかうと、国境の川があってな。そこに橋がかかっているんだが、関所があって、通行証がないと渡れないんだよ」
「名人は通行証持ってるんですか?」
「いや、ないよ。だから心配してるんじゃないか。まさかと思うが、魔物が出るっていう古いトンネルを通ったんじゃなかろうなぁ」
まさかじゃないね。きっとそうだ。
RPGあるある〜
まあ、行くんだけどさ。