第355話 レッドドラゴン戦!6
文字数 1,287文字
ああ……こんなことなら、ケチなこと言わずに、財布、持ったままでバトルにのぞめばよかった。
そうしたら、この瞬間に25億ダメージで勝ってたのに。
なんでなくなったんだろ?
誰かが預かりボックスから、とりだしたってことかな?
まあいい。
とにかく今はレッドドラゴン戦だ。
ドラゴンを倒してしまわないと。
「じゃあ、さっき言ったとおりの作戦で。僕が倒されたら、よろしく」
ぽよちゃんに魔法をかけてもらい、僕は精霊王のレプリカ剣をかまえて走りだした。
「わあッ! わあっ、わあっ! えいえい! これでもか! これでもかっ! ふう……まだまだ行くよー!」
三十回って、けっこうな回数なんだよねぇ。レッドドラゴンのまわりをチョコマカしながら、尻尾や足、背中など、よけられないところを重点的に狙う。
刺す。刺す。もう刺すよぉー。
現実世界でなら、そうとうなサイコやろうと恐れられてるとこだけど、僕はレッドドラゴンの固い皮膚を切り裂きまくった。
プス。プス。プス。ツプ。ツプ。プシャー。
はぁはぁ……。
行動回数、使いきった。
三十回。
ダメージの合計は18216。
前のターンで一万弱だったから、計28500ほど。
やっぱり残ったか。
あと1500ほどなんだけどなぁ。
「じゃあ、みんな、さがってて。ケロちゃんたちのカンオケも車に入れといてね〜」
僕が手をふると、アンドーくんが猫車からおりてきて、カンオケを車内に回収する。
さあ、もうしょうがない。
運がよければ、レッドドラゴンの攻撃力が思いのほか低くて、僕も生き残ることができるかもしれないし。
それよりショックなのは財布がなくなっちゃったことだなぁ。
ああ、僕の招き猫ぉ……。
だけど、そのときだ。
とつぜん、ダディロンさんが「ぬおーッ!」と叫んだ。
「男ダディロン! ひくわけにはいかんな! 助けてもらった恩、ここで返そうではないかー! 冷却水ィーッ!」
えっ? なんで逃げないんだ?
だって、どうせ攻撃したって、1500には届かないのに。
「ぬおおおーッ!」
ダディロンさんの体が赤く光る。
あっ、もしかして、『ためる』かな? いや、ためるによく似た効果で、魔法攻撃のダメージを上げることのできる『気合』のようだ。
気合のおかげで、ダディロンさんの攻撃魔法が少しだけ強力になった。
1200ダメージ!
水の結界ほどではないけど、三割増しだ。
あと300。
300ほどで、レッドドラゴンは立ってる。
でも、もう攻撃できるメンバーはいない。アンドーくんと、たまりんは回復魔法を使った。
やっぱり、僕は一回、死ぬしかないんだ。
僕があきらめきっていた瞬間、猫車から誰かがとびだした。
ん? まだ誰かいたっけ?
それは、イケノくんだった。
イケノくんは両手ににぎった短剣を、一回、二回、レッドドラゴンの足元に素早くつきさす。
十数秒のあいだ、なんの変化もなかった。
ど、どうなんだ?
ドラゴン、倒れたのか?
倒れないのか?
やがて巨体がグラリとゆれる。
レッドドラゴンは地に伏した。
やった……。
倒した。
僕たち、レッドドラゴンを倒したぞー!