第326話 お母さん戦!2

文字数 1,593文字



 やっぱりお供がいたのか。
 それも、アンドーくんの妹たち……。
 アンドーくんの兄妹はこの二人だけだ。ほかに呼ばれて出てくるとしたら、お父さんと、おじいさん、おばあさん。その前になんとかしないと!

「両側の二人は夢遊拳ですね。ヒラヒラかわすだけで攻撃力は低い。あとまわしにしましょう」
「わかったよ」
「せやな。お袋さん、かんにんな」

 まずは僕の攻撃。
 もちろん、その前にターン開始時、薔薇はかかってるんだけど。
 例のごとく、足ぶみをいっぱいして、素早さを高める。
 アンドーくんの家族にムダに痛い思いをさせないためにも、一、二ターンのうちに終わらせたい。そのためにも、いっぱい、いっぱい足ぶみする。

 よし、じゃあ、やるぞ。

 僕はタタッと走って、お母さんに近づく。
 鞘つきの剣で、ひざカックンしようと思ったんだけど……。

 ふらり。
 ふらり。

 僕の前に二人の人影が立ちふさがる。
 妹ちゃんたちだ。
 十五歳と十六歳。
 どっちもアンドーくんに似て可愛いよね。アンドーくんちは美形一家だ。お父さんも今は頭薄くなってたけど、けっこうハンサムだったもんな。
 妹ちゃんたちのくつしたなら、はける……。

 ハッ! かーくん、しっかりしろ!
 いかん。いかんぞ。
 女色におぼれるところだった。

 僕はお母さんのところまで行きたいのに、妹ちゃんたちがクニャクニャしながら行く手をふさぐ。
 作戦とは外れるけど、ここはお供から倒すしかないのか?
 しょうがない。
 鼻ちょうちんさえ割れればいいんだよな。

 僕は美少女たちの鼻ちょうちんを剣のさきでつつこうとする。が、速い! 動きが読めない!
 ヒラリ、ユラリとかわされる。
 ダメだ。やっぱり、夢遊拳、強し!
 こっちの素早さをマックスまであげるために、僕は走りまわった。

「かーくん! がんばって!」
「私が加勢しましょう。乗りこなすランクが上がったので、はねるも使えるようになりました」

 背後から蘭さんやバランの声がする。
 そういえば、くぽちゃんは夜なのに起きてるな。なんでだ? 夜ふかし派なのか?

「あっ、ちょっと待って! シャケとぽよちゃん、前衛後衛を交代してくれる? ぽよちゃんの夢遊拳なら一発で割れるから」
「じゃあ、ぽよちゃん。お願いします」
「キュイ……」

 ぽよちゃんは寝ながらやってきた。
 はねるを使いながらかけてきたので、僕のところにたどりつくまでに、素早さが倍増されていた。
 寝てても、ちゃんと戦えるんだなぁ。
 夢遊拳。スゴイ。

 寝ぼけながらチョコチョコ走る白ウサギ。可愛いなぁ。戦場のいやし、ぽよちゃん。

 しかし、攻撃はキレてる。
 ぽよちゃんの前足がシャッ、シャッと舞うと、夜の暗闇を青く切りさく。パチン、パチンと妹ちゃんA、Bの鼻ちょうちんが弾けとんだ!

 僕は二人の背中にトスン、トスンとかるく剣を押しつける。
 HP20とか30とかの人たちだ。
 ムダに大ダメージをあたえてはいけない。

 女の子二人はムニャムニャ言いながら倒れた。

 よし! これで、あとはお母さんだけだ。
 予定とは違ったけど、僕はマックスまで素早さあげたんで、まだ十回やそこらは動けそうだ。これなら問題なく、お母さんも失神させられる。

 僕はお母さんに近よっていったんだけど……。

「すいません。ごめんなさい。ちょっと、コツンとしますよ」

 お医者さんが注射する前に「チクッとしますよぉ〜」と予告するかのように、僕が宣告したときだ。

 急にアンドーくんのお母さんは泣きだした。
 で、出た? 泣きマネか?

 しくしく。しくしくしく……。

 ヤダなぁ。胸が痛いじゃないか。
 こっちだって、叩きたくて叩くわけじゃないんだよ?
 でも、ダメダメ。
 ヤドリギのカケラをとりのぞかないと、この人はずっとあやつられたままなんだ。

 僕は心を鬼にして、剣をふりあげた。
 いや、あげられない!
 手が動かない!
 なんだコレーッ?
 金縛りィー!
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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