第239話 次は魔法屋

文字数 1,058文字


 合成はまだまだ、おもしろい組みあわせがありそうだ。
 装飾品屋さんが言ってた、月の結晶と星の結晶も合成してみたいなぁ。

 今回は精霊のアミュレットの改造だけだ。
 バジリスクの涙と蛇の牙をたして、アンドーくん用にした。
 スズランは装備してる額飾りが毒、眠り、魅了、石化をふせぐ装飾品だったので、それをアミュレットに合成した。
 二人のアミュレットは、無効になってない状態異常の素材が手に入ったときに足していくことになる。

「あちゃー。お客さん。銀晶石がなくなってしまいましたでございます。もっと合成したいときは銀晶石が入荷するまで待つか、ご自分で依頼を受けてとってきてくだされでございますですよ」
「わかりました。じゃあ、また後日、来ます」

 合成屋。
 あれこれ組みあわせ考えてれば、一日中でもすごしていられそうだ。
 だけど、今日のところは電池切れ。
 次は魔法屋に行ってみよう。
 いろいろ買い物できるこの幸せ。
 都会っていいなぁ。

 魔法屋は合成屋のとなりだ。
 このギルドはガラス格子の壁で仕切られた小部屋が続いている。
 整然としてるし、なかがどの店なのかすぐにわかって、初めてでも歩きやすいね。

 魔法屋もサンディアナにはなかった。
 なかへ入ると、ひとめで魔法使いとわかる青白い顔の男がカウンターにすわっていた。

「……いらっしゃい」

 声に張りがない。
 あまつさえ、客の僕の顔を見てため息をついた。

「あの? 何か悩みでも?」
「……いえ。なんか用?」
「魔法屋って、なんの店なんですか? ブッキーの落とす魔法のカードでも売ってるんですか?」

 僕がカウンターに近づいていくと、男はため息をつきながら顔をそむけた。
 し、失礼な店員だなぁ。
 そんなんじゃ接客業失格だぞ?
 アパレルショップの店員として、かーくんは怒っちゃうよ?

「それも、売ってます」
「あっ、そうなんだ。じゃあ、いっぱい買おうかなぁ」

 で、また、ため息。
 さらには、いったん席を外して、奥のほうで酸素吸入器みたいなものをスカスカしだした。

「もしかして病気なんですか?」

 病気ならしかたないよね。

「……病気。まあ、病気みたいなものかな。人間アレルギーなもんで」
「人間……」
「アレルギー! だから、あんまり近づかないで」
「あ、はい」

 うーん。なんで、ギルドの人たちって、こう個性が立ちすぎてるんだろう?
 ふつうの店員でいいのに。

「で、何を置いてるんですか? ブッキーの魔法カードだけ?」

 魔法使いは首をふった。
「魔法の秘伝書を売ってるよ」

 魔法の秘伝書とな?
 それ、なんじゃらほい?
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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