第126話 お魚街道のさきには

文字数 1,045文字



 ウツボン、テッポオ、ヒトヒト、ピラメ、ホタッテ、チビシャーク——
 お魚街道だ。
 魚でないのは海スライムとウミヘビくらい。
 クラーケンの子どもっていうのも出てきた。子どもがいるってことは、そのうち、クラーケンも出てくるのか……。
 タコツボはフジツボに間借りするタコね。フジツボのようなタコのようなヤドカリのようなモンスターだ。ちっちゃいフジツボからデッカいタコがとびだしてくるんで驚く。海のビックリ箱だね。

 この魚市場を主戦力の蘭さんをぬきにして、よく戦ってきたと思う。
 僕ら、がんばったよ。

「なんか道がどんどん、もぐってない?」
「もぐっとるなぁ」
「この位置、海の底なんじゃないの?」
「底かもしれへんなぁ」

 やがて、最深部に到達した。
 岩肌の天井にかこまれた地下に、たぷん、たぷん、とゆれる海水が満ちた広い空間があった。まんなかに小島があり、岩が橋のように小島までつながっている。

 うーん。水深は深そうだ。下のほうを大きなサメのような魚影がゆっくりと泳いでいく。
 ここ、落ちたら確実に溺れるよね。
 気をつけなきゃ。

 で、意味ありげな小島。
 もちろん、そこにホワイトドラゴンはいた。真っ白なキレイな竜だ。優しそうな目をしてる。
 できれば戦いたくないんだけどなぁ。

 やっと蘭さんも馬車から出てきて、いったんアンドーくんと交代する。

「僕の言葉がわかりますか? ホワイトドラゴン」

 蘭さんの問いかけに、ホワイトドラゴンが答えた。

「ええ。わかりますよ」

 おおっ! 通じた。人間語。
 今度こそ、するっとウロコを渡してくれないかなぁ? するっとね。さらっとね。つるっとでもいい。

「僕の友人が魔王軍のドラゴンの竜毒にやられ、死にかけています。治癒するためには、あなたのウロコが必要だと聞きました。どうか、あなたのウロコを一枚だけ我々にわけてくださいませんか?」

 こ……今度はいけるかな?
 フェニックスみたいに変な事情もなさそうだし。

 すると、ホワイトドラゴンはうなずいた。

「いいですよ。そういうことなら、私のウロコをさしあげましょう」

 えっ? ほんとに? ラッキー。
 戦わなくてすむんだ?

「ただし、あなたがたの勇気を私に示しなさい。あなたがたの友人を救いたいという気持ちが本物だと、私に認めさせてごらんなさい」

 そう言って、ホワイトドラゴンは背中の翼をひろげた。

 ああ……やっぱり、そうなるのねぇ。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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