第68話 人さらいBは……

文字数 982文字



 蘭さんとスズラン(この話ではこの表記で行こうと思う。ロランの蘭さんとシャケの三村くんだけでも、ややこしいし)が、僕らのほうを同時にかえりみた。
 やっぱり双子だね。
 タイミングがまったく同じだ。
 シャイニング〜
 ん? ちなみに僕は観たことないけど。

「じゃあ、マーダー神殿へ帰りましょう。アンドーくんでしたか? あなたは悪のヤドリギにあやつられていました。ヤドリギのカケラが体からぬけたので正気に戻ったのです。ミルキー城の内部のことも聞きたいし、いっしょに行きましょう」
「あれ? らんらん姫?」
「ああ、そうか。お城の兵士ってことは、僕のこと、そう思ってますよね」

 とにかく、僕らは危険なモンスターの出る森のなかから、安全なマーダー神殿へ場所を移動することにした。

 でも、その前に、もう一つやっとかないといけないことがある。
 人さらいBだ。
 安藤くんは改心したけど、Bはまだヤドリギのカケラがぬけてない。あやつられたままだ。
 そもそも、人さらいBって誰なんだ? 安藤くんの地元の友達に、Bで始まる名字の人いたっけな?
 び、び……備中呉妹(びっちゅうくれせ)? いや、それは駅の名前だ。しかも無人駅。
 坂東(ばんどう)! そうだ。坂東とか? いや、でも、そんな人、あの村にはいなかった。

 僕は倒れたままの人さらいBをながめた。こいつも喉のあたりで何かモコモコ動いてる。
 僕は気になって、まず覆面をはぎとってみた。

「あッ! 池野くんじゃないか」
「池野だな」と、猛。

 なんだぁ。池野くんか。
 坂東じゃないのか。
 人さらいBのBは坂東のBじゃなかった。

 もちろん、池野くんは安藤くんと同じ村の住人で、僕らの友達だ。
 これは救わなければ。

 僕は「えい!」と喉のモコモコを鞘をつけた剣で叩こうとした。
 だけど、その前に池野くんが目をあけた。白目をむいたままだ。まぶただけは、しっかりあいている。怖い。ホラーっぽい。

 池野くんは白目をむいたまま走っていった。

「池野くーん!」
「ああ、イケノ! どこ行くや?」

 僕や安藤くんが呼びとめても、まったくとどまるようすがなかった。池野くんは森のなかに消えてしまった。
 きっと、あやつっているヤドリギのところへ帰る気なんだ。
 心配だなぁ。
 池野くん……。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み