第112話 五百円で得た情報
文字数 1,375文字
「あのキャラバンは勇者狩りの前後に街に現れる。どうやら勇者狩りをしているのは、やつらのようだ」
僕はハッとした。
ある意味、ビックリした。
「えっ? 今さら、そんな情報?」
お姉さんはムッとしたようだ。
「じゃあ、どんな情報ならいいの?」
「今どこにいるかが知りたいんだよ。やつらはここへ来る途中、コビット族の村を襲って、村長の娘をさらったんだ。人間に見世物にしてやると言ってたから、街か村にいるはずだ。それで、通り道で一番近いのがこの街。ついでに言えば、コビット村を襲ったのは、魔物のくせに人間と戦わないからだって。やつらの正体は魔物だったって、コビットの証言がある」
お姉さんはすばやく、それらを手帳にメモした。おいおい。
「貴重な情報、ありがとう。ギルド貢献ポイント100と、“情報通”の称号をあげる」
「あ、ありがとう……」
ポイントだけたまってもなぁ。
情報が欲しいんだけど。
「じゃあ、お姉さんはキャラバンがどこにいるか知らないの?」
「ルベッカよ。あたしの名前はルベッカ」
「ルベッカさんは知らないの?」
お姉さんは鼻で笑った。
「待ちな。坊や」
ああっ。こういうお姉さんに坊やと呼ばれるの、決して嫌いじゃない!
「情報屋をなめないでくれる? 五百円出せば、もっといい情報をあげるよ」
「はい。五百円」
「じつは昨日の昼ごろ、この街に旅のサーカスがやってきたんだ。馬車三台のサーカスで、ピエロと動物と、調教されたモンスターがいた。ウワサに聞く怪しいキャラバンの特徴に似てるんだよ」
「そ、それだ! そいつらに間違いないよ」
「そうだろ?」
「そいつら、今、どこに?」
お姉さんはカウンターの向こうから片手を伸ばしてきた。追加料金を払えというのか。いいだろう。僕は五百円玉を出して、お姉さんの手ににぎらせた。
ルベッカさんはニヤリと笑う。
うーん。カッコイイ。
清楚系美少女もいいけど、アダルトなお姉さんとの旅も楽しそうだなぁ。
ルベッカさんは仲間にはならないのかな?
「東の森のなかに夜営してるようだ。あそこに行けば会えるんじゃない?」
「ありがとうございます!」
「なーに。どうってことないよ。情報屋を見くびってもらっちゃ困る」
「ですね!」
「そうそう。あんたには特別にイロつけてやろう。となりの仕事斡旋所に行ってみな。キャラバン関係の依頼がいくつか来てる。対決するんなら、受けられそうな依頼、受けてから行きなよ。依頼主の話聞くと、また別の情報も手に入るしね」
「なるほど」
僕らはさっそく、となりの部屋へ——行こうとしたんだけど、ふと好奇心がわいた。
「あの、今一番高額な情報っていくらですか?」
「五万ってのがある。でも、これはトリプルAランクにならないと教えられない」
「ああ、そっか。じゃあ、ランクCで教えてもらえる最高額は?」
「二千円」
「はい。二千円」
「…………」
つかのま、お姉さんは千円玉二枚を見つめた。
「いいよ。教えてやろう。裏切りのユダを知ってるかい?」
「魔王の四天王の一人でしょ?」
「そう。そいつの姿を見たって男がいるんだ。シルキー城の兵士だったらしい。シルキー城を襲ったのは、ユダの手先のようだね」
鬼教官トーマスだ!
あとで絶対、お見舞いに行かなくちゃ。