第48話 僕の宝箱……

文字数 1,073文字



 ミミック。
 それは今や万人が知るところとなった、宝箱に擬態(ぎたい)するモンスター。
 ほかのモンスターは著作権が関係するかなと思って、似たような造形をイメージしても、名前は微妙に変えてあったりするんだけど、コイツはもうスライム同様、いろんなゲームにこの名前で出てくるんで、ゲーム界共通の名称として見ていいと思う。

 大人の事情を長々と書いてしまった。

 気をとりなおして、ミミックだ。
 僕はふたをあけたばかりの宝箱を、ちろりと流し見る。
 ふたのすきまから、黄色く光る目が一対、こっちを見あげていた。

「出ーたぁー! バケモノー!」

 ミミックはムッとしたようだった。
 いきなり、僕の腕にガツンとかみつこうとする。

「燃えろ〜」

 蘭さんの呪文詠唱とともに、ミミックの口のなかに炎がとびこんでいった。ミミックがあわてて僕から離れる。
 そのすきに、僕はなんとかとびのいた。
 あっ、危なかった。腕、食いちぎられるところだった。

「ありがとう。ロラン」
「油断しないで。ミミックは『死んじゃえ〜』を使う手強いモンスターです」

 ああ、即死系魔法ね……。
 そうだった。
 コイツは危険注意モンスターなんだ。
 なんか『死んじゃえ〜』と言うと、ちょっと可愛いような気もするけど、くらったら、たまらない。

「なるべく早く倒さないと。でも、ミミックは素早いから、僕も二回攻撃ができない」
「よし。次はおれの番やな」

 三村くんはブーメランをなげた。
 が、ヒラリ!
 かわされたッ!
 コイツ、ほんと素早いぞ。回避率も高い。

 僕は蘭さんほど素早くないんで、ふつうの攻撃があたる気がしない。
 しょうがない。ここは、装備魔法だ。

「破魔の剣〜」

 何回やっても恥ずかしいな。
 まだ、これ、破魔の剣だからいいよ?
 もっと笑える名前の装備品だったら言えなくないか?
 たとえば、『変なおじさんの鼻メガネ〜』とかさ。
 絶対、戦闘に支障をきたす……。

 とにかく、小さな炎がポッと浮かびあがって、ミミックに命中した。ミミックはプルプルと体をふるわせている。でも、そんなに効いてる感じはない。

 ぽよちゃんは……。
 うん。あいかわらずの定番の“ためる”ね。お目々ギュッとして可愛いね。
 でも、速攻で倒さないといけないモンスター向きの攻撃ではない。

 さて、ミミックのターンだ。
 僕らは恐る恐る、願っていた。
 どうか、『死んじゃえ〜』だけは言わないでくれと。

 しかし、ヤツは唱えた。
「死んじゃえ〜!」
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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