第86話 フェニックス戦! 6

文字数 808文字


 ビュンビュンビュンビュン——
 ブーメランの風を切る音が戦闘音楽さえしのいで響き渡る。

 僕にしては信じられないくらいの豪速球だ。
 これで当たりさえすれば。
 当たれ!
 当たれ!

 僕らは全員、同じ思いでブーメランを見つめた。

 やがてブーメランはきれいな放物線を描いて、フェニックスのやや背後にまわりこむと、ガッツンとスゴイ音を立てて、後頭部を直撃する。

 フェニックスは倒れた。
 巣のなかで完全に目をまわしている。

「ヤッター!」
「勝った! おれら、フェニックスに勝ったでぇー!」
「やりましたね!」
「キュイキュイ!」
「……ま〜」

 ん? ドサクサまぎれにクマりんがしゃべった? しゃべれるのか。このクマ。

 僕らは勝利を確信してハイタッチやら円陣スクラムやら、なんやらかんやら忙しかった。

 でも、そのときだ。
 フェニックスの頭部がメラメラと燃え始める。最初は小さな火だったけど、それはみるみるフェニックスの全身を包み、巨大な炎になる。

 な、なんだ?
 何が起こったんだ?
 そういえば、いまだに戦闘終了の音楽に変わらない。
 ま、まさか……?
 そんなバカな?
 まだ戦闘は

のか?

 フェニックスの巨体はまたたくまに灰燼(かいじん)に帰す。
 そうだ。思いだしたぞ。
 フェニックスっていうのは不死の鳥だ。寿命がつきると、その体は燃えつき、灰のなかから……。

 僕らの目の前で、

が現れた。
 灰のなかから、両翼をひろげた光り輝く神鳥がよみがえってきた!

「う、ウソだ……そんな……」
「もう、ムリだよ。僕のMP残ってない」
「アホな。こんなん、どないせぇちゅうねんな?」

 僕らは絶望感にとりつかれた。
 今さらもう一度、最初からなんて、どう考えたって無理ゲーだ。
 プレーヤーを殺す気しかない。
 このさきに行かす気がないとしか思えない。
 この世界を創った神様が、もしもいるのだとしたら。

 すると、そのときだった。
 僕らの背後から、トコトコと何かが駆けてきた。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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