第265話 伝説の鍛冶屋
文字数 1,082文字
次に僕らは情報屋に行った。
あの銀晶石の森の遺跡のなかに誰も入っていかないように、ギルドに管理してもらいたかったからだ。
「——というわけで、あそこはすごく強い銀晶石のゴーレムが守ってる聖域です。一般人を近づけちゃいけません。それに、貴重な古代の遺跡です。考古学的に見ても、あのままの形で残していかないといけないと思うんですよ」
「なるほどね。明日さっそく調査隊を送るよう、今からギルドに申請してみる。いい情報、ありがと。ギルド貢献ポイント200を二人にあげるわ」
ラベッカさんに褒めてもらった。えへへ。
ギルドの管理地になれば、もう銀晶石のゴーレムも心ない人に襲われることはなくなるだろう。
「それにしても、あの森には最近まで古代遺跡なんてなかったんだけどね。きっとこの前の地震のときに隠されていた入口が露出したのかもしれないね」
「そうなんですね」
「このごろ、各地で天変地異や異変が起こってる。まだまだ情報が必要だわ。また頼むわね。坊や」
「はい!」
さ、次は仕事斡旋所だ。
石像になったベベロンさんをつれていく。
「すいません。この人、遺跡を盗掘しようとしてたんで、石にして持って帰ってきました。天使の羽いりますか?」
「いや。それにはおよばんよ。しかし、盗掘か。困ったやつだ。はい。これが報酬」
報酬に千円もらった。
僕はそれを蘭さんに渡した。
「合成屋さんの依頼の銀晶石はこれです」
「はいよ。報酬」
また千円もらった。
僕はそれを蘭さんに渡した。
クエストの報酬って千円単位かぁ。
どおりで傭兵呼びが大喜びされるわけだ。三百万を二百人で割ると一人頭一万五千円。それが十回だもんね。
おじさんは石のベベロンさんをかかえて、教会につれていった。教会のお祈りのほうが天使の羽より安い。
あっ、もちろん、ぽよちゃんはとっくに石化、解いてある。
僕らもなんとなく、ついていった。
教会で人間に戻ったベベロンさんは、舌打ちついて去っていった。
「あの人、盗賊なんですか?」
「違うよ。鍛冶屋の息子だ。あいつの親父はそりゃもう見事な腕前でな。ここらじゃ伝説の鍛冶屋とまで言われたんだが、ある夜、急に姿を消して行方不明なんだ。それ以来、ベベロンのやつ荒れてねぇ。祖父のジジロンさんが手を焼いて困ってるんだ」
「そうなんですか」
ベベロンさんのお父さん。
伝説の鍛冶屋かぁ。
残念。会ってみたかった。
いったい、どこへ行ってしまったんだろう?
自分の意思で旅立ったのか?
それとも、事件に巻きこまれたのか?
なんだか気になる。
やっぱり大きな街だなぁ。
いろんな人がいて、いろんな事情がある。