第108話 ゴールド会員への長く険しい道のり

文字数 938文字



 僕はそこで、ふと気がついた。
 さっき、受付のお姉さんが、冒険者ランクを上げると、お店で安く買い物できるって言ってたよな?
 それで、ランクを上げるためには、救助をしたりギルドに寄付するといいって。
 もしかして、僕、今すぐランク上げられるんじゃないか?

 でも、まずは貯金だ。
 銀行の貯金が百万を超えると何か貰えたはず。それに、貯金の額が多いほど、小銭拾いの金額も上がる。まずは僕自身のベースを底上げしといたほうが、のちのちお金集めが楽になる。寄付はそのあとだ。

 僕は銀行へ急いだ。
 銀行は地下にあった。金庫室に直結してるようだ。

「お金、預けに来ました!」
「はいはい。かーくんさんですね。いくらお預けになりますか?」
「百万!」
「百万……ですか?」

 あっ、インテリそうなメガネかけたおじさんが、不信の目で僕を見ている。

「うん。百万」

 僕はミャーコポシェットから財布をとりだし、カウンターの上にザラザラと金貨を山積みにする。
 ああ、気持ちいい。
 おじさんのビックリ目が心地よい。ふふふ。

「——九十八、九十九、じゃあ、これで百万ね」
「た、たしかに承りました。少々、お待ちくださいね」

 おじさんは金貨をお盆に載せて金庫室に運んでいく。金庫番の立つ金庫の扉の前に機械があって、それでお金を読みとった。たぶん、贋金(にせがね)とか調べたり、金額に間違いがないか確認するためだろう。
 数えおわると、帳簿係が記録して、僕のお金たちは金庫室のなかへつれられていった。

 バイバイ。元気でね。お金ちゃん。
 貯金されても、いつでも僕とつながってるからね。

 やがて、インテリ風受付のおじさんが帰ってきた。

「お待たせいたしました。現在、かーくんさんからは百七十五万円お預かりしています。かーくんさんの貯金が百万円に達しました。妖精の羽衣をさしあげます」
「はい。ありがとう」
「かーくんさんの貯金が百五十万円に達しました。妖精のネイルをさしあげます」
「はい。ありがとう」
「次は二百五十万円に達したときに、オリハルコンのよろいをさしあげます。お楽しみに」
「はい。楽しみです」

 ヤッター!
 今回も二つも粗品を貰ってしまった。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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