第72話 モンスターおじい爆誕

文字数 953文字



 夜になる前に、宿屋で休んでいた僕らのもとへ、見覚えのあるおじいさんがやってきた。
 神殿の前で馬車を押し売りしてきた、あのおじいさんだ。

「いい馬が手に入ったんじゃ。いつでも馬車が出せるぞよ」
「ほんとですか?」
「うん。これで自分をふくめ、仲間を八人までつれて歩ける。それに、あんたたち、さっき子グマちゃんをわしのとこによこしたじゃろ?」
「あっ、すいません。数が多くてつれて歩けなかったので」

 老人は怒ったふうではない。
 どっちかと言うと嬉しそうだ。

「いやいや。モンスターとは言え、人になついて可愛いもんじゃな。そこで、わしは思った。馬車も譲ったことだし、わしはここを住居にして、外の花畑にモンスター預かり所を作ろうと思う。仲間の数が増えすぎたら、わしのところへ預けなされ。世話をしてしんぜよう。そのかわり、経費として五千円払ってくれんかのう?」

「五千円ですね。いいですよ。はい」

 五千円くらいは聖女の塔へ向かっているあいだに拾ったから、チョロイもんだ。
 やった。これで、子グマちゃんもつれて歩けるぞ。

「子グマちゃんのステータス、見とこうか?」
「そうですね」

 僕らは子グマちゃんを宿の部屋に呼びよせた。
 子グマちゃんは指をしゃぶりながら、三村くんにすりよる。傷をなおしてもらったので、恩義を感じているようだ。

 子グマちゃんは案の定、レベル1だった。仲間になったばっかりのときは、どの子も1なんだな。

 HP25、MP0、力5、体力5、知力2、素早さ2、器用さ3、幸運2。

 マジックなし。

 得意技
 仲間を呼ぶ
 合体
 プリティー

 仲間を呼ぶと合体はわかるよ。
 でも、プリティーってなんだ?

 初期数値を見た感じだと、子グマちゃんはこう見えて、意外と力と体力の伸びる戦士タイプだ。
 僕がレベル1だったときより、HPや力が高い。

「子グマちゃんの名前、なんにする?」
「そんなん、クマ公でええやろ」
「ダメ! そんなダサいのイヤ!」と反論したのは、蘭さん。

 う、うん。まあ、僕もクマ公はちょっと……。

「じゃあさ、クマりんってのはどうかな?」
「いいですね! クマりん。可愛いよ。クマりんにしよう」

 こうして、夜はふけていく。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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