第53話 まだまだ小銭無双

文字数 875文字


 次は防具屋……なんだけど、さっきの武器屋のリストを見てれば、なんとなく想像がつく。
 この神殿は黒金装備の一式だ。
 ちなみに黒金っていうのは鉄のことだ。今まで青銅のよろいまとってたんだから、黒金でも、ずいぶん進歩したと思う。

 装備品で考えると、そろそろ序盤が終わりかけてるな。
 このあと、中盤に入ってくんだと思う。

 僕の大好きだったあのゲーム。
 とくに、いろんな意味で感慨深いのはシリーズⅤだ。あの話でお父さんに置いていかれて、ペットとともに洞くつへ追っていく前、最後の武器屋で売ってたのが鉄の装備品だった。
 そのあと、怒濤(どとう)の展開で、少年は青年になるのだった。
 ああ、懐かしい。

 そうか。僕らの旅も中盤にむかってるのか。
 じゃあ、ちょっと気をひきしめて、現金も銀行に預けておくほうがいいのかもしれない。

「全滅したら、モンスターにお金とられるよね?」
「そうですね。所持金の半分くらい」

 僕の半分って四十万以上か。
 武器が二千円以内で買えるのに、四十万とられるのは悔しすぎる。
 そういえば思いだしたぞ。
 あのゲームの終盤、お金で買える最高額の武器でさえ五、六万って単位だった。防具は三万くらい。

 そう思うと、四十万って終盤まで通用する金額じゃないか。
 危ない。危ない。
 僕は石橋を叩いても渡らない慎重派!
 これ、マジでリア友に言われたセリフだ。

 僕は考えた。

 とりあえず八十五万にふくれあがったお金ちゃんは、銀行に待機させよう。
 そして、お城のまわりとか、街のまわりとかの、銀行がすぐそばにある比較的安全な場所でのみ半額をおろして、周囲をグルグル歩きまわろう。

 そうすれば、あっというまに万単位でたまっていく。それをまた全額、銀行に預けてから遠出する、をくりかえしていけば、全滅の心配せずにお金を集められる。

 それに後半になればモンスターから得られる勝利報酬も、かなり上がるしな。

 僕はたぶん、この世界にいるかぎり、お金に困ることはないであろう。ふっふっふっふっ……。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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