第118話 見つめあう僕ら

文字数 888文字



 ピエロの目が僕を見る。
 僕もピエロを見る。

 お、襲ってくるかな?
 それとも仲間を呼ぶのかな?

 ドキドキ。ドキドキ。

 ところが、ピエロは無反応。
 というか、ちょっと今、笑ったぞ?
 変だな。
 襲ってくる気配がない。

 僕は急いでロープをほどく。
 固いなぁ。誰だよ、こんなにギッチリしばったヤツ。
 よいしょ。なんとか、ほどけた。

 まだ見てるなぁ。ピエロ。
 いいのかな?
 このままコビットちゃん、貰っていこう。

 それにしても、ピエロの顔に見覚えがあるような?
 いや、まさかねぇ。こんな魔物の集団のなかに知りあいがいるはずがない。
 いや、もしかして池野くん?
 違うな。池野くんはもっと小柄だ。僕より背も低かった。

 じゃあ、誰だろう?
 誰かに似てるんだよなぁ。
 真っ白い顔と大きな赤い鼻のせいでサッパリわかんないんだけど。

 ピエロはじっとこっちを見てるけど、まだ動かない。
 ありがたや。
 僕は鳥かごをかかえて前方の幌のやぶれめまで戻る。ぽよちゃんと、たまりんがそこで待ってた。

 うーん。ピエロ、謎の男だ。
 おかげで助かったんだけどね。

 外に出たところでアンドーくんや子どもたちと合流した。
 僕らはアンドーくんの隠れ身の術で、キャラバンから遠ざかっていった。
 あの作り物のイバラのところまで帰ってくる。

「よ、よかった……もう終わったと思った」
「おかしげなヤツだったね。なんで襲ってこらんだっただぁか?」
「なんでだろう」

 気になるなぁ。
 絶対、僕の知ってる誰かだったんだよね。
 もしかして、また僕の小説に出てくる登場人物の誰かだろうか?

 なんにせよ助かった。
 子どもがいるんで、旅人のドアノブで森を脱出し、どうにかこうにか僕らはサンディアナの街まで帰っていった。

 ギルドに子どもたちをつれ帰ると、初めての任務は終了。
 わが子が戻ってきた親たちは泣いて喜んでいた。

 やあ、気持ちいいなと思ってたんだけど、このせいでキャラバンの逆襲が始まるなんて、このときは思ってもいなかった……。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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