第365話 宴をぶちこわせ!

文字数 1,275文字



 ブラン王の決意をムダにはできない。
 僕らはすぐにも大広間へ行って、宴をぶちこわさないと。

「かーくんさん」と、クルウが助言してくれた。
「鏡は回収していきましょう。もしも、ブラン王が倒されたときに、ヤドリギの魂がとびだしても、鏡のなかへ帰ることができないように。行き場を失った魂は消滅すると、さきほどミラン様がおっしゃった」
「そうですね。だけど、魂って壁ぬけができるんですよ。回収したあと、どこで保管しておくんですか?」

 たまりんが壁のこっちからあっちへ、あっちからこっちへ往復してみせると、クルウは思案した。

「カバンのなかなら、いかかです? 各自が持つ無限収納のバッグ。あれなら、持ちぬし以外は出し入れができません。つまり、魔法の結界と同じ効果があるのです」
「なるほどね! それなら鏡を入れとけば、万一のときにもヤドリギが帰っていく場所はなくなるね」

 というわけで、僕のミャーコが自分の体より十倍も二十倍も大きな姿見を、ミャーンと一口で飲みこむ。スゴイなぁ。なんでも飲めるミャーコ。

「じゃあ、行きましょう!」
「ええ。今度こそ、爆薬を使います。さがっていてください」

 僕らは仕掛け扉の前にまで下がった。
 クルウが爆弾の点火ヒモに火をつけ、彼自身も扉の前までかけさった。
 まもなく、ドカンと一発。
 頑丈な石造りの壁も、さすがにくずれる。

「かーくんさん。壁の穴が思ったより小さい。あなたがたの小さな車なら通るが、我々の戦車は通らない。さきに行ってください。我々はあとから追います」
「わかりました!」

 一刻の猶予もないからね。
 こうしてるあいだにも偽の王様が何をするか。

 僕らはクルウたちを残して、さきを急いだ。

 鏡の間のむこうには細い階段があった。両側を壁に挟まれてる。
 むーん。これは、クルウの隊の戦車は、どっちみち通れないなぁ。
 僕らの猫車は小さいし、それに車をひいてるのが猫なんで、器用にトコトコついてくる。

 やっと地上部分についたのかな?
 細いろうかだ。
 そこから、ダンジョンになっていた。
 クルウが言ってたとおり、竜兵士やガーゴイル、それにバジリスク隊長なんかが出てくる。

 もう、うっとうしいなぁ。
 急いでるのに!

 道が細くてカクカクして、進みにくい。部屋に入っていく扉がいっこうにない。
 ミルキー城ってこんな感じなのかな?
 もしかして、ここ、壁のなかなんじゃない?
 王様が秘密で外に脱出するための秘密のぬけ道。
 部屋と部屋のあいだにスキマを作っておいて、そこを通り道にした感じだ。

 これ、どこから出たらいいんだ?
 ふつうにお城のなかに入りたいんだけど。

 カク、カク、カクっと大きく直角にまがるところは、たぶんお城のかどっこ。小さくカクカクまがるのは、小部屋をよけて進んだのかな。

 たまに階段。
 ちょっとずつ上階に上がってる。
 これ、出口、どこにつながってるんだ?

 ようやく前方にかすかな光が見えた。
 ドアの形に四角く光がもれている。

 出口だ!

「みんな、行くよ!」
「おおー!」
「うん。行かや」
「ケロケロ〜」

 僕らは一丸となって光のなかにとびこむ。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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