第252話 あきらめる

文字数 1,061文字



 ターン開始時、ケロちゃんの自動石化攻撃! ただし、狙われたのは僕ね。

「け、ケロちゃん? 僕、味方なんだけど?」
「ケロ?」

 ダメだ。ケロちゃん、見えてない。
 これはマズイぞ。今のメンバーは僕もロランもバランも、装備品のおかげで状態異常にならないけど、装備が整ってないメンバーがやられたら、仲間なのに石にされてしまう。
 ケロちゃんも早期に状態異常にならない装備にしとかないと、こっちが怖いよ。

「なるほどね。たかが目くらましって言っても、同士討ちになることもあるんだ」
「状態異常にならない装備って大事ですね」
「ケロ?」
「あっ、ケロちゃん。僕のこと、なめないでくださいね」
「ケロ?」
「いや、僕のこともなめないでよね」
「ケロケロ?」

 ダメだ。ケロちゃん、すっかりパニックになってる。

 そんなことを話していたときだ。
 急に「わあッ」と向こうのほうから悲鳴が聞こえてきた。

「どうする? 僕らも戦闘中なんだけどな」

 蘭さんは思案した。

「ちょっと、ゴーレムと交渉してみましょう」
「えっ? できるの?」
「わからないけど」

 蘭さんは銀晶石のゴーレムを真正面に見つめる。

「悪いんだけど、さきを急ぐから、戦いを待ってもらってもいい? あとで帰ってくるよ」

 そう言って、悲鳴の聞こえるほうに歩きだす。
 ゴーレムはつかのま、戸惑うように固まっていた。が、そのうち、テロップが流れる。


 銀晶石のゴーレムは戦いをあきらめた。
 引き分けとなった。
 銀晶石のゴーレムが仲間になった。


 えッ! あきらめるってアリ?
 そんなことで仲間になっていいの?
 やっぱり魅了の一種?
 ズルイ。なんかズルイ気がするけど、これも得意技のうちだ。

「銀晶石のゴーレムだから、銀ちゃんかな?」
「えっ? それはちょっとダサくありませんか?」
「えっ? ダメ?」
「ダメっていうか」
「ええ? いいと思うんだけど」
「ケロ?」
「ああっ、ケロちゃんはもう戦闘終わったから、なめないでね」
「ケロケロ」

 にぎやかに話しながら、悲鳴のほうへかけていく。
 何事かと思えば、ダルトさんたちだ。

「なんだ! こいつは。こんなやつ、これまでこの森にはいなかったぞ?」

 見れば、そっちも銀晶石のゴーレムと格闘中だ。見るからに悪戦苦闘してる。パーティーの全員が目くらましにかかって、好き勝手に武器をふりまわしてる。
 うーん。装備品って、大事だね……。

 あげくのはてに、ダルトさんはあの禁句を叫んだ。
「賭けてみる〜?」

 ああ……全滅しちゃったよ。
 あの人たち。

 人間が次々とカンオケになっていくさまを、僕らは見つめた。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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