第338話 再会! 地下牢

文字数 1,350文字



 うっ。どうしよう。
 今の僕らのサイズだと、ドブネズミなんか超巨大モンスターなんだけど?
 戦うしかないのか?

 赤い目は、じっと僕を見つめて、ゆっくりと近づいてくる。
 ギャー! 来たー!
 来なくていいのにっ。

「来たよっ。どうしよう! あっ、そうか。もとのサイズに戻ればいいのか。クピピコ、お願いっ」
「心得た」

 だが、クピピコがコビット王の剣をつきだす前に、それはやってきた。
 暗闇からかけだして、僕にとびついてくる。
 た、食べられるゥー。助けて。兄ちゃーん!

 モンスターは美味そうに、僕をペロペロと……ん? ペロペロ、長いな。

「キュイ」
「キュイ?」
「キュイキュイ。キュー?」
「あっ。ぽよちゃんだった」
「キュイ〜!」

 なんで地下牢に、ぽよちゃんが?
 でもこのお耳のハート模様は、まちがいなく、ぽよちゃん。
 よく見ると、うしろから、たまりんもついてきてる。大きな火の玉だから、てっきり松明の明かりかと思った。てへっ。

「ぽよちゃん。どうして、ここに?」
「キューキュキュイ。キューイキュウ」

 わからない……。
 このサイズになっても、ぽよぽよ語はわからないのか。

 見かねたのか、クピピコが訳してくれた。
「兄上のあとを追ってきたと申してござる」
「兄上……」

 ジーン。
 ぽよちゃんは僕のことをお兄ちゃんだと思ってくれてるのかっ。感動!
 てか、クピピコはぽよぽよ語がわかるのか。ズルイ。

「ぽよちゃん。ありがとう〜」
「キュイ〜」

 その後、クピピコの説明でわかった。
 僕らのあとを追ってきた猫車のメンバーは、お城の近くで謎の穴を発見した。入ってみると、そこは地下ダンジョンだった。

 つまり、もともと僕らがそこから侵入するつもりだった、秘密の地下道の街側出入口のようだ。
 その途中、ぽよちゃんなら通れるスキマがあったので入ってみると、地下牢につながっていた、と。
 猫車は通れなかったので、そこで待たせて、ぽよちゃんと、壁ぬけできるたまりんだけが、僕らを探しに来てくれたようだ。そうか。たまりん、壁ぬけできるんだ……。

「よし。じゃあ、その壁のスキマから地下道に行こう。シルバンとケロちゃんが留守番してるんだよね? 早く合流しないと心配だ」
「そげだね」
「キュイ〜? キュイキュウ。キュイ」
「えーと……」
「わが背に乗ってくだされと申してござる」
「ありがとう! ぽよちゃん」
「キュイ〜」

 助かった。
 僕らは足をたたんで小さくなったぽよちゃんの背中に、よじよじ、よじのぼる。
 これで探索効率が上がるね。

「じゃあ、出発〜」
「キュイ!」

 クピピコを入れても四人。
 僕らが乗っても、ぽよちゃんのスピードはまったく劣らない。

 これで秘密の地下道までは一直線だ——と思っていたやさきだ。

「あれ? あの牢屋のなか、誰かいるね」
「あっ、ほんとだ。誰だやら?」
「ぽよちゃん、ちょっと止まってね」
「キュイ〜」

 僕らは鉄格子のスキマから、なかをのぞいた。

 この城の地下牢は、数のわりにガラ空きだ。犯罪者が少ないならいいんだけど、僕らみたいに投獄されたあと、すぐに処刑されてるんだとしたら……怖い国だ。恐怖政治だよ。裁判も何もなく、えん罪も関係なしで、国民を処刑していくなんて。

 だから、牢屋のなかに人がいることじたい珍しい。どんな人が捕まってるんだろう?
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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