第113話 初仕事〜
文字数 1,149文字
仕事斡旋所。
つまりはゲームでよくあるクエストの管理所だ。依頼を受けたり、逆にお金を出して依頼したりもできる。
冒険者ランクを上げるためには、こういうことも多少はしとかないといけないので、本筋のついでに片づけられる依頼があれば嬉しい。
ちょうどいい依頼はあった。
むしろ、ありすぎた。
仕事斡旋所の受付には、ヒゲはフサフサ、頭はピカピカのおじさんが。かなりマッチョだ。
「キャラバン関係の依頼ね。あるよ。これだね」
うわっ! ビックリしたー!
急に目の前にバサバサと紙の束が百枚つづりで降ってきた。
「な、なんですか? これ、全部?」
「全部だ。全国のギルドから依頼は入ってくるからな。キャラバンに子どもをさらわれた親の依頼がほとんどだ」
「そうか。各地で子どもや若者がさらわれてるんですもんね。依頼もたくさんあって当然か。一度に何個でも依頼って受けられるんですか?」
フサフサでピカピカのおじさんは右手をいっぱいに広げてみせた。指が五本ある。
「五個までってことですか」
「そう」
僕は最新のものから、わりと簡単そうなのを五個選んだ。最新のものはこの街で起こった行方不明事件だからだ。しかも、今日の昼のことだ。どれもサーカスを見ていた子どもがそのまま家に帰ってこない。サーカスにつれさられたんじゃないかと思う。子どもをとりもどしてほしいという依頼だった。
もっと過去のものには怪しいキャラバンに街を襲われ、家族が殺された。キャラバンを倒してほしいといった内容もあった。が、まだ、僕らの実力でキャラバンを倒せるかどうかがわからない。いずれは倒さないといけないけど、今は偵察がてら、コビットの女の子と依頼にあった子どもを救いだすのがやっとなんじゃないかと判断した。
詳しい依頼願書を読ませてもらう。
五件とも似た状況で子どもはいなくなっていた。
ピエロの芸を見ているうちに、いつのまにか消えたというのだ。
そして目撃例のなかに、座長を見たというものがあった。座長は人間とは思えないほど背の高い猛獣使いで、仲間にゴードンと呼ばれていたらしい。座長が鞭を鳴らしただけで、猛獣がおびえたという。
「座長が怪しいね。強い魔物かもしれない」
「そげだ。用心すっか」
「うん」
偵察に行くのに馬車では目立ちすぎる。こっそり探るには人数が少ないほうがいいかもしれない。
今ここに、ちょうど四人いる。
パーティー人数だ。
「僕らだけで、行ってみる?」
「ようす見ならいいだない? わの職業スキルの忍び足や隠れ身があれば、無用な戦闘をさけることもできィし」
「そうか。諜報員だったんだもんね」
というわけで、僕らはそのまま夜の森へ行くことにした。