第130話 ホワイトドラゴン戦! 4

文字数 1,848文字


 ザーン、ザザーンと、高波が僕らを優しく包みこんだあと、さらに勢いをつけてホワイトドラゴンをも飲みこむ。

 水中を浮遊するような感覚。
 気がつくと、僕らの状態異常はすっかり治っていた。

「まぶしくない!」
「見てください。ホワイトドラゴンの魔法バリアが消えてる」

 魔法バリアだけじゃない。
 たぶん、反射攻撃もだ。

「さっきのが装備品魔法の“海鳴りのラプソディー”なんだ」
「虹のオーロラに似た効果なんですね」
「ロラン。かーくん。HPも回復しちょうよ」
「ほんとだ。火の粉の痛みがなくなってる」
「僕もです。全回復しました」

 そうか。だから、たまりんが勝手に出てきたんだ。この効果を知ってたんだな。発動までに3ターンかかるとは言え、逆に3ターンごとに必ず状態異常とHPが回復すると思えば、ボス戦ではめちゃくちゃ便利だ。

 たまりん、ありがとう!

「よし! 今のうちにたたみかけましょう! いっきに行きますよ」
「わかった」

 蘭さんのムチ四連打!
 アンドーくんの「もっと燃えろ〜!」
 僕のクリティカル!

 ホワイトドラゴンはおとなしくなった。

「私の負けです。あなたがたの勇気を認めましょう」

 ヤッター!
 ホワイトドラゴンを倒した。

 チャラララッチャッチャー!
 またレベルアップだ。
 どんどん強くなるぞ。僕ら。

 これでトーマスを救える。
 早くサンディアナに帰らなくちゃ。

 僕らはアイテムを使って急いで街へ帰った。ホワイトドラゴンから貰ったウロコを持って意気揚々。
 でも、僕が一歩、街のゲートにふみだそうとしたときだ。

「ちょっと待って。かーくん」

 蘭さんが険しく表情をひきしめる。
「街のなかに敵がいる。それも、いたるところに」
「えッ?」

 な、なんだ?
 いったい、どうしたんだ?

 蘭さんの危険察知能力か。
 蘭さんはモンスターの気配を感知したようだ。
 街のなかにモンスター?
 なんで?

 僕はシルキー城が襲われたときのことを思いだした。

「ま、まさか……」
「うん。きっとそうだ。あのキャラバンのやつら。各地で街を襲ってたんだろ? 本性を現したんですよ」

 ああ、甘かった!
 やっぱり、あのまま、すごすごと、どこかへ行ってくれたりはしなかったんだ。やつらはよりによって僕らがいないすきに、最悪の形で街を襲ったのか。

「街の人を助けないと」
「でも、待ちぃや。よう考えや? シルキー城におった敵。街を襲っとるんが、あんなんやったらどないすんねん。ホワイトドラゴン一体に、おれら、あれほど手こずったんやで? ホワイトドラゴンと同レベルのやつらが街中にウヨウヨおったら?」

 たしかに、シルキー城のときは、そうだった。ザコ敵のレベルが魔王城クラス。一体一体がホワイトドラゴンなみに強いやつらばかり。

「でも、今の僕らは一体ずつが相手なら、なんとか倒せるよ? 少しでも倒して、街のみんなが逃げだす時間をかせがないと」

 僕が言うと、三村くんやアンドーくんもうなずいた。
「せやな……おれらだけ逃げだすわけにはいかんしな」
「忍び足で行かや」

 でも、蘭さんは微笑した。
「安心してください。今回の敵はシルキー城のときほど強くはありません。危険察知の感じだと、さっきの竜の岬の周辺の出現モンスターくらいです」
「そうか。それなら……」

 安心しかけたのに、今度は蘭さんの顔がくもる。

「ただ、なかに一部だけ、すごく強いやつがいるんですよね。ほんの数体ですが。そのなかでも、とくに一体、とんでもないバケモノがいる。あいつには今の僕らじゃ勝てない……」

 僕は思った。
 昨夜の迷路の森の夜営地で見た、座長のゴードン。アイツのことじゃないだろうか? アイツがものすごく強いモンスターだということは、ひとめでわかった。

 僕はそのときのようすをみんなに語った。

「だから、アイツだと思う。アイツに出会わないように気をつけないと」
「そうですね。街の人を助けて逃げだすのに力を貸しながら、トーマスの家をめざしてウロコを届けましょう」
「そうだね」

 そのとき、街の中心部から狼煙(のろし)が上がった。真っ赤な血のような狼煙だ。
 ギルドが他の街に火急を知らせ、応援を要請したんだろう。
 まもなく、王都や周辺の街からも救助がやってくる。

「よし。僕らも行こう!」
「うん」

 僕らは街にふみこんだ。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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