第122話 スズラン初参戦
文字数 2,012文字
毒リンゴ爆弾。
これが、やっかいだ。
遠距離の全体攻撃で、しかも被弾のあと毒状態になる。ただの毒じゃない。猛毒だ。通常の毒状態よりHPの減りが早い。
さらに——さらにだ。
この毒は伝染する。
パーティーのなかの誰か一人でも毒にかかると、一人また一人と毒状態が感染していくのだ。感染時は無効耐性も関係ない。
なんて、いやらしい攻撃なんだ。
思ったとおり魔女に変身した毒リンゴは、毒リンゴ爆弾をなげてきた。
でも、こっちのメンバーは全員、毒耐性があるんだもんね。
よし。反撃だ。
蘭さんが鞭をふりあげる——が、
「待ってください。お兄さま。わたしにやらせてくださいませんか?」
「やりたいの?」
「わたしもみなさんのお役に立てるところを見せたいです」
「ふうん。じゃあ、やってごらん。失敗しても僕が後始末するから、安心して」
「はい」
スズランはどんな攻撃するのかな?
武器は弓矢だけど、やっぱり賢者だし魔法かな?
植物系モンスターは火属性に弱い。
スズランなら知力高いし、“もっと燃えろ〜”くらいで倒せそう。
ところが、スズランは僕の予想に反して、弓に矢をつがえた。キリキリと弦がしなる。
通常攻撃か。でも、スズランは力弱いんだよな。一撃では倒せないだろうね。モンスターのHPも高くなってきてるから。
きしむような音を立てて、矢がスズランの手を離れた。
風のような速さで空を切りさく。
紫色のマントの魔女をめがけて迫る。
魔女の眉間……いや、違う!
矢はスポリと、毒リンゴに刺さった。
魔女が頭の上に載せた毒リンゴだ。
なんでそんなとこにリンゴ載せてるんだろうとは思ってたんだけどさ。どうやらそこが魔女の急所だったようだ。
「ギャーッ!」と叫び声をあげて、毒リンゴの魔女は倒れた。
スズランちゃん。ナイス!
カッコイイ……。
戦闘を終えて、馬車は進む。
が、この感じは覚えがあるぞ。だんだん慣れてきた。
「なんかついてきてるね」
「あっ、またストーカーを作ってしまったかもしれません」
「姫リンゴかなぁ?」
敵だとやっかいだけど、味方にいれば心強い。でも、ふりかえったときに見たのは、黒ウサギに乗った騎士のほうだった。
「イバラの騎士か」
「まあ、いいんじゃないですか? パーティーの盾になってくれる」
「そうだね」
ぽよちゃんの“ためる”やクマりんの仲間呼びのように、ターンを要する戦いかたをするときに、盾がいて守ってくれるのはいい。
それに、可愛い黒ウサギが来て、ぽよちゃんが嬉しそうだ。ウサギは仲間がいると安心するのだろう。
イバラの騎士のステータス。
レベルは毎度のことながら、まだ1。
HP50、MP0、力7、体力6、知力3、素早さ7、器用さ3、幸運1。
マジックなし。
得意技
騎士道
薔薇
乗りこなす
うーん。薔薇? まあ、バラはバラだけどさ。得意技で薔薇って、どんななの?
それにしても数値が全体に高い。
同じ戦士系のクマりんでも、レベル1のときのHPは25かそこらだった。これは育てると万能型の優秀な戦士になるやつだなぁ。あのゲームで言えば、スライムに乗ってた小さいナイト。ピエールとアーサーにはお世話になったもんだ。
「あれ? 馬車に乗れるね。九人めじゃないんだ?」
「スズランがまだ完全な仲間じゃないみたいですね」
「そっか。これで八人めってことか」
たしかにNPCは人数に入らないらしく、コビットたちも乗ってるけど、数にカウントされてない。
僕らはイバラの騎士をバランと名づけた。
ちなみに僕のステータスはどうなってるんだろ?
僕のレベルは20。もうすぐ21だ。教会の神父さまによれば、あと350ほどでレベルアップするという。
数値はレベル19のときと、そんなに変わりない。HP188、MP148、力51(56)、体力48(52)、知力96、素早さ55、器用さ85、幸運99998。
マジックには変わりないけど……ん?
得意技が一つ明るくなってる。
また一つ使えるようになったんだ。
なんだろ? 逃げ足の速さならいいんだけどな。
……つまみ食い。つまみ食いか。
よりによって使えない技だなぁ。
なんだろう? モンスターからアイテムでも盗めるのかな? それならちょっとは役立ちそうなものだけど。
僕は詳細説明を見てみた。
そこには、こう書かれていた。
つまみ食い(ランク1)
敵モンスターからランダムな項目のステータスを1〜3吸いとる。吸いとった数値は戦闘終了後も減らない。
一戦闘で一回のみ使用可能。
えっ? それって、レベルアップに関係なく、無限にステータス上げられるってこと?
ぼ、僕って、またまたチートを手に入れたんじゃ……?