第102話 怪しいキャラバンを追って

文字数 1,283文字



 僕らは当然、コビットたちを戦力とは思っていなかった。
 僕らだけでキャラバンを追っていくつもりだったんだけど、立ち去ろうとする僕たちに、村長が言った。

「クピピコ。ピコピラー。クッピピ。コピコピクピコピピ。ピコピコ」

 うーん。やっぱりわからない。わかるのは、むやみやたらと可愛いってだけだ。

「クピピコ。ピコピラー。クッピピ。この村の三人の戦士を戦いに捧げます。ぜひつれていってください。と長は言っています」

 戦士がクピピコ、僧侶がピコピラー、魔法使いがクッピピのようだ。

「どうします?」
「いや、あかんやろ。すぐやられんで」
「でも、待ってよ。戦闘は僕らがやるとしても、もしかしたら戦闘以外のことで役に立つかもよ? 偵察とか、僕らには入りこめないような小さな穴から侵入するとかさ」
「そうですね。そんなこともあるかもしれませんね。つれていきましょう。彼らなら、馬車のなかにいても場所はとらないし」

 というわけで、戦闘要員ではないものの、僕らの旅にコビット族三人がついてくることになった。可愛い生き物が増えていく。ある意味、ウハウハだ。

 馬車のところまで帰ると、僕らはさっそくキャラバンを追う。

「どっちの方角に行ったんだと思います?」
「神殿の方向にしろ、ふもとの村にしろ、洞くつのほうに行ったのなら、僕らとすれちがってるはず」
「ですよね。ということは、ボイクド方面へ行ったんですよね。ボイクド国は大きな街が多いから」
「そうなんだ」
「ボイクド国の王都シルバースターへは、馬で三日はかかるんじゃないかな」
「ふうん」

 僕らは馬車と言っても徒歩で外を護衛しながら歩いてるんで、この速度なら三日どころじゃない。一週間以上かかるのかもな。

「ふもとにはサンディアナっていう街があったはず。まずはそこへ行って、キャラバンのウワサを集めましょう」

 そこへたどりつくまでに追いつければいいけど、たしかに僕らは出遅れてるぶん、山道で追いつくのは難しいだろう。

「そうだね。見るからに怪しいらしいから、きっと人のウワサになってるよね」

 僕らは虹の谷をくだっていった。
 ときどきモンスターとも遭遇したけど、苦戦することもなく順調に進んでいく。

 水スライムっていう、クリスタルのようなキレイなスライムが出てきた。変身が得意技で、いっしょに出てくるあばれ馬やキツネッコや子どもフェアリーに化けた。変身後も体色が透明のままなんで、これまたキレイだった。

 虹の谷の宝箱にはよく種が入っていた。力の種とか幸運の種とかだ。
 あと、妖精の涙っていう小瓶に入った(しずく)はMPを回復してくれる貴重なアイテムだ。

 山をくだり、平原に出るころには夕暮れになっていた。
 やっぱり、途中の道でキャラバンに追いつくことはできなかった。

「あっ、あれだ。街の灯りが見えてきた!」
「遠くから見ると宝石箱みたいですね」

 あれが、サンディアナ。
 ついに僕らは国境の山脈を越えた。
 街の灯が僕らを迎え入れるように、優しく輝いていた。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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