第52話 僕の小銭無双!
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神殿に集まった人たちの話は、だいたい聞いた。
光るツボやタルも割りつくした。
ちなみに百三十円とHPの種が出てきた。ラッキー。
よし。次は武器屋と防具屋だ。
ここって、たぶん、将来的に転移魔法の拠点タウンの一つなんじゃないかな?
設備がすごい整ってる。
神殿なのに、バーまであるんだ。
これは、アレだなぁ。
仲間の人数が増えすぎたとき、待っててもらう待機所。
おっと、武器屋と防具屋だ。
まずは武器屋から。
黒金の槍、黒金の剣、黒金のブーメランがある。ちょっと変わったところで、メイス。黒金の牙。
「牙か。ぽよちゃん。ちょっと来て」
「キュイ?」
「あっ、やっぱり装備できる。攻撃力が30も上がるのかぁ。ここは買っとかないとね」
「キュイ!」
千二百円か。
一回の小銭拾いより安い。
もちろん、即買いだ。
「すいませ〜ん。黒金の牙ください」
「はいよ。毎度あり」
「ほ〜ら。ぽよちゃん。新しい牙だよぉ」
「ピュイ、ピュイ!」
僕は破魔の剣のほうが、まだまだ強いので、そのままだ。蘭さんも買える鞭のなかでは最強の装備だから、武器屋に用はない。
「じゃっ」と言って、僕が武器屋を出ようとすると、三村くんが悲しげな瞳で僕を見た。
「ど、どうしたの? シャケ」
「黒金のブーメラン……千八百円」
「うん。そうだね」
「百円、足りひん」
「えっ? なんで? 僕が破魔の剣買った代金持ってるんじゃないの?」
「さっき銀行に預けた」
「なんで?」
「弟妹が多いんや。家族を養わんと」
「うッ……」
そう言えば、三村くんって現実でも、お姉さん二人と妹一人だったかな? 姉妹がいっぱいいたっけ。姉一人と妹二人だったかな?
まさか、大家族設定で来るとは。
しかも弟妹ってことは、弟が増えてる!
ズルイぞ……。
「……わかったよ。僕が買うよ。パーティーの攻撃力が上がったほうが、僕も助かるし」
「おおきに! ありがとさん!」
うーん。商人にしてやられた気がしなくもないけど、まあいいや。
千八百円くらい、安いもんだもんねぇ。