第208話 やってきました。ポルッカランド

文字数 1,402文字



 草原の遠くのほうに線路が見える。
 あれが僕らの乗った汽車の行く道か。
 平行するように敷石された細い道があり、これが地方と王都をつなぐ街道だ。ローマは一日にして成らず——なんとなく言ってみた!

 こんもりした森をぬけ、ポルッカランドの東側の端についた。
 街のまわりに木の柵がある。
 そこに木の看板がたてられていて、ポルッカランドと記されていた。

 国というには、ひなびてるなぁ。
 牧歌的な村そのもの。
 畑や田んぼや果樹園のむこうに、遠く屋敷がポツリと一軒。

「ここからはモンスターが出るんだね?」
「出よるで。キノッコとか。バンビーノとか。庭スライムとか。あと、カマキリンとか。やっかいなんは、バジリスクやなぁ。石化攻撃してくる」

 聞いたことないモンスターばっかりだ。

「バジリスクはいろんなゲームで有名なやつだよね。トカゲなんでしょ?」
「ゲーム……」
「あっ、そこはいいから」
「トカゲやな。ペロンとなめられると、石になるんや。クマりんが石にされてなぁ。ノーランまで逃げだすんに、えらい苦労したわぁ」

 な、なるほど。
 実質、戦士二人で旅してたのか。石のクマかかえて。それは大変だったよね。

 僕の好きなドラゴンなゲームには、石化異常は出てこなかった気がするけど、ここは似て非なる世界だからな。石化異常を治すアイテムがあれば買っとくんだったなぁ。

「じゃあ、バジリスクに注意して進もうか」
「誰が戦うことにすう? 人数、増えたが?」と、アンドーくん。

 たしかに久々に八人だ。馬車に乗りこめる人数、もうちょい増やせないかなぁ? せめて十二人なら三パーティーなのに。

「私はつきそいですので、数には入りません」と、クルウが胸に手をあてて、かるく一礼した。
 美男は何しても似合いますね。

 クルウはNPCか。
 じゃあ、あと四人が戦えるよね。
 悩んだけど、僕は副リーダーでパーティーの主戦力だ。それに、素早くて攻撃力の高いぽよちゃんは外せない。
 あと二人を誰にするか。
 アンドーくんの「みんな巻き」はボス戦にとっときたい。
 クルウも騎士だから直接攻撃系で、戦士が外に三人か。

「魔法使いがアンドーくんだけかぁ。回復役もたまりんだけでしょ? 二人にはMP温存してもらうことにして、外を戦士でかためるってのも一つの選択肢かな。じゃあ、僕、ぽよちゃん、シャケ、バランで。バランと戦ったことまだないよね。楽しみ」

 僕は破魔の剣と竜鱗のよろい、竜鱗のかぶとを三村くんに渡した。竜鱗の盾と竜鱗の靴は、僕が装備してたんだけど、オリハルコンのよろいだけで充分の防御力がある。なので、鋼鉄シリーズの盾とブーツをひっぱりだして装備しなおすと、竜鱗の盾と靴を三村くんに渡した。

「おおー、気前ええなぁ。ええんか? すまんなぁ。スゴイやんか。トータル防御力140やで。ありがたいわぁ」

 うーん。シャケ商店で僕はぼられるのに、三村くんはタダ。なんか納得いかないなぁ。

「じゃあ、バランには銀の胸あてあげるよ」
「かたじけない」

 あっ。そうだった。バランは日本語しゃべるんだった。

「盾とかぶとは黒金かぁ。もっといろいろ買っとけばよかったなぁ」
「黒金のかぶとは少々……私の好みでは」
「あっ、そう?」

 話していると、急に背後で「わあッ」と叫び声が聞こえた。

「……なんなの? シャケ」
「このよろい、今、光りよったで」
「えっ?」

 たしかに、三村くんの全身が光ってる。なんだろなぁ?
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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