第286話 名人を求めて

文字数 1,289文字



 オリヤ村のなかを見物するまもなく、僕らは北をめざした。お昼ご飯のために、パンとチーズと汁気の少ない野菜スープは買ってきたけどね。スープはナベごとだ。

「あっ、名人がどんな人か聞いとけばよかった。男か女かもわからない」
「はたおりって、たいていは女の人がしてませんか?」
「そげだねぇ」

 森がだんだん深くなる。
 街道が続いてるからいいけど、そうでなきゃ迷ってるとこだ。
 樹木のあいだをついてくる人がいるような……。

「なんかいるよね? あそこ」
「えっ? どこですか?」
「ほら、あの木のかげ」
「あッ」と言って、蘭さんは人影っぽいものから顔をそらした。

「どうしたの?」
「見ちゃいけません。あれは森の人です」

 森の人……オランウータンかな?

「オランウー——」
「タン、じゃありません。知らないんですか? 世界の各地には、森のなかで原始的な暮らしを続けてる人たちがいるんです。見ためは僕らとそんなに違わないんだけど。彼らはこっちが手出ししなければ襲ってはきませんから」
「そうなんだ」

 アボリジニとかホピとか、そういう部族なのかな?
 それとも、イエティとか原人とかヒバゴンとかか?

「でも、変だな。森の人の多くはウールリカにいるはずなんだけど。こんなところで見かけるなんて」
「ウールリカが魔物に襲われたせいかな?」
「そうかもしれないですね」

 神秘の森の人。
 遠かったから、どんな種族なのか見ることはできなかった。
 ちょっと興味ひかれたんだけどな。

 森のなかには

以外にも森の人がいた。今度こそ、オランウータンだ!


 野生のオラタンが現れた!
 野生の火の玉(グリーン)が現れた!
 野生の森スライムが現れた!


 ああ、やっぱり、オランウータンもいるよねぇ〜

 オラタンは身長二メートルくらいの腕の長いおサルのモンスター。
 火の玉グリーンは、たまりんの色違いだ。キレイなエメラルドグリーンをしてる。
 同じく、エメラルドグリーンのスライム。プルプルゆれる森スライムは、マスカット味のゼリーのよう。

「あっ、美味そう! 僕のゼリーちゃん」
「かーくん。だんだん、ゲテモノ食いになってきてますよ?」
「えっ? そうかな? 昼飯はあとで食べるよ」
「とりあえず戦いましょうか」

 外のメンバーは僕、蘭さん、アンドーくん、ぽよちゃんだ。

「ザコだし、余裕ありそうだよね? たまには違うメンバーで戦ってみる? いろんなパターンの戦法を熟知してるほうが実戦でプラスになると思うんだ」
「そうですね。じゃあ、アンドーにさがってもらって、ケロちゃんに出てきてもらいましょうか?」
「そうだね。じゃあ、ぽよちゃん。聞き耳、お願いするよ〜」
「キュイ〜」

 聞き耳が後衛からできるようになれば、もっといろんなバリエーションで戦えるなぁ。

 ぽよちゃんの聞き耳によると、オラタンはHPと力高めの戦士型。行動パターンは威嚇(いかく)と、胸を叩くと、通常攻撃。
 火の玉グリーンは、たまりんと基本行動パターンは同じだ。ただし属性が風属性になってる。サンダー系の魔法を使うのかな?
 森スライムは、プルプルと……ん? 変身だ。どっかで聞いた技だな。

 まあいいや。
 戦闘開始!
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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