第312話 火竜戦!2

文字数 1,340文字



 よかった。
 しょっぱなからブレス攻撃かまされてたら、さすがに直接攻撃だけでは厳しかった。
 僕のHPなら一撃死はないはずだけど、ほかのメンバーがヤバイ。
 素早さ判定はパーティーメンバーの平均値が関係してるみたいだ。
 きっとワレスさんがいてくれるおかげで、僕らの素早さ平均がグンと上がってるんだ。

 こっちの最初のターン。

 薔薇が舞う。
 バランの薔薇はほんとにありがたい技だ。火竜は目くらましにかかってるふうはない。ボスには効かないだろうなぁ。

 ワレスさんは腕を組んだまま動かないんで、次の順番は蘭さんだ。

 僕は足ぶみしながら待つ。
 足ぶみというか、靴底が地面に接すると装備品魔法が発動するとわかった。つまさきをパタパタさせただけで、どんどん素早さが上がっていく。

 蘭さんはクィーンドラゴンの鞭をふるった。風がうなる。ドラゴンに二倍効果のおかげで、一撃で三百けずれる。
 すねを叩かれて、火竜の目元がピクリと動く。
 蘭さんは三連打。
 これでもう九百ダメージだ。
 意外とイケてるな。

 さてと、次の順番は僕だ。
 つまみ食いのせいもあるけど、カジノの景品で貰った風のバンダナのおかげだ。合成で薔薇のコサージュと合体してもらった。

 ごついオリハルコンのよろいに、旅人の帽子、薔薇のししゅう入りバンダナを首に巻いて、ばあちゃんのアミュレットつけてる僕のカッコはどうなんだと思うけど、オシャレまで気にしてられないよ。
 この服装でショップの店番に立ってたら、お客さん誰も近寄らないだろうなぁ。

 僕はわあわあ言いながら、あたりをかけまわる。なんか、これがクセになってしまった。わりとスッキリするんだよね。ストレス解消にいい。

 さてと、もう500%以上は数値上がった感じがするな。慣れで、だいたいのパーセンテージは予測がつくようになった。

「じゃ、行きまーす!」

 ピョンととびあがり、ドラゴンの前足に乗った。タタタッと走ると、さらにスピードが上がる。

 よいしょ。
 ドラゴンの肩口に剣をふりおろす。
 ドラゴンの硬質なウロコにも、思っていたより深い傷がついた。
 攻撃のすぐあとに、剣がオレンジ色の光を放つ。

 むっ? この石、攻撃力にプラス数値がつくだけじゃないのか?
 今の光で、体のなかに力がこみあげてきた。これは蘭さんに『みんな、がんばろ〜』をかけられたときの感覚だ。
 見おろすと、パーティーのみんなもオレンジの光で包まれていた。

 そうか。この精霊石、『みんな、がんばろ〜』の魔法効果なんだ。もっとがんばろ〜ほど強くはない。
 だから、薔薇のほうが一度の上昇率は高い。でも、薔薇はターンに一回ずつだ。僕のレプリカ剣の装備品魔法は、攻撃するたびに毎回かかる。ということは、素早さしだいで一回のターンに五、六回と重ねがけできるんだ!

 僕は嬉しくなって、ドラゴンの背中で走りまわった。
 あはは。えへへ。ふへへへへへ……。

「わ〜い! わ〜い!」

 ザックリ、ザックリ!
 ザクザクリ!

 攻撃するにつれ、力があふれてくる。
 しかも、必ずクリティカルがキマるんで、一回の攻撃で五百、六百とダメージ入るんだよ。

 走りながら剣をふりまわしたんで、七回も攻撃できた。
 合計四千二百のダメージ!
 スゴイ。なんだこの強さ。
 自分が怖い〜
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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