第32話 ミノタウルス戦! 4

文字数 810文字



 ミノタウルスの斧が目の前に迫る!
 ああ、もうダメだ。
 ここまでだったか。
 僕のゲームライフ。
 もうちょっと遊びたかったよ。
 兄ちゃんもいないし、やっぱり僕一人じゃ……。

 すると、そのときだ。
 何かが僕の前にとびだしてきた。
 三村くんか?
 いや、違う。もっと小さい。

「キュイーンッ!」

 ミノタウルスの斧を体で受けて、ボトリと地面に落ちたのは、ぽよぽよだ。僕らのあとについてきてた、あのぽよちゃん。

 みるみる赤い血があふれてくる。

「ぽよちゃんッ!」
「キュウ……」

 そうだった。すっかり忘れてたけど、蘭さんの得意技で仮の仲間になっていた、ぽよぽよ。

 なんで、こんなことを……。
 僕をかばってくれたのか。
 ごめんよ。ぽよちゃん。

 蘭さんの鞭が二度、鳴った。
 バシン、バシンとミノタウルスを強打する。
 最後にブーメランが、ミノタウルスの胴体の上を往復する。
 ミノタウルスは地に伏した。
 完全に失神している。

 なんか音楽がチャラチャラ鳴って、みんなレベルアップしたみたいだけど、僕はそれどころじゃない。

 血を流すぽよちゃんを前に、けんめいに「元気になれ〜」「元気になれ〜」とくりかえした。MPが底をつくまで。
 だが、ぽよちゃんは目をひらかない。

「ぽよちゃん……」

 蘭さんが僕の肩に手をおいて首をふる。
 僕はそれでも、あきらめきれない。

「ぽよちゃん。死んだんじゃないよね? そうだ。いやしの泉に戻ろう。MPを回復したら、また呪文が唱えられる」
「ムダですよ。だって、かーくん。笑ってないよ。呪文は記号の顔で言わないと」
「だって……笑えないよ。こんなときに」
「教会で蘇生してもらいましょう。このぽよぽよは、まだ僕らの仲間だ。だから、蘇生魔法で生き返るかもしれない」
「わかった」

 ぽよちゃん。きっと君を生き返らせてあげるよ。待っててね。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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