第246話 それぞれの課題

文字数 1,092文字



「そう。課題だ。それぞれの長所を伸ばし、弱点を克服する。まず、勇者。おまえはパーティーのリーダーであり、メインアタッカーだ。職業選択も悪くない。冷静な判断力もある。だが、みんなをひっぱっていくためには、もっとぬきんでた力が必要になる。どうせなら得意技に磨きをかけろ。魅了のランクをあげれば、あやつるが使えるはずだ。たとえば、ポルッカ戦、ボスには状態異常が効かなかったとしても、お供のバジリスク隊長をあやつることができていれば、劇的に戦いが楽になっていたはずだ」

 なるほど。たしかに……呼ばれてくるケロよんを倒すくらいのことは、バジリスク隊長にもできてた。
 敵をあやつることができれば、実質パーティーの攻撃回数を増やすことになる。

 居間の窓ぎわにいくつか置かれたソファー。その一つに腰かけ、長い足を組みながら、ワレスさんは続ける。

「アンドー。おまえは武闘家になれ。パーティーの攻撃バリエーションを増やすべきだ。素早さ、身軽さ、腕力の高さを活かせる。そのあと盗賊をマスターすれば忍者になれる。忍者のマスターボーナスは素早さのプラス補正だからな」
「わかりました」

 なるほど。それも納得。そのほうが、トドメのスキルも今より生きてくるか。
 そういえば、魔法使いになったのは、魔法攻撃できる人がいないってだけの理由だったもんな。

「シャケは今ここにいないから、伝えてくれ。将来的に重騎士になれるような転職を重ねるといい」
「はい。伝えときます!」

 返事しながら、僕は期待をこめてワレスさんを見つめる。
 僕にはどんなアドバイスしてくれるのかなぁ?
 舌ペロして尻尾ふるワンコの気持ち。

「かーくん」
「はい!」
「おまえはとてもユニークな得意技を持ってる。そのランクを上げていくことが将来的には重要だ。とくに現状、短期的に強くなるために、ザコと連戦し、つまみ食いか? おまえの持つ変な数値を増やすことだ」
「そうですよね」
「レベルアップに関係なくステータスを上げられる。そんな技があるなら、もっと利用しないと。特訓だ。明日から一日、百匹以上のモンスターと戦うこと」
「百匹……」

 す、スパルタだなぁ。
 でも、やるぞ。かーくんはやるもんね。憧れのワレスさんに言われたんだから。

「特訓に最適な場所を教えてやるよ。この城の北東に銀晶石の森がある。その場所に今、なぜかスライムが大発生しているんだ。ただのスライムだから経験値はほとんど得られないが、敵が弱い。おまえには、そのほうが都合がいいだろう?」
「はい!」

 ふうん。銀晶石の森か。
 銀晶石がとれるのかな?
 それなら、ついでに合成屋さんのクエストを受けてもいいかもねぇ。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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