第202話 お城と言えば、ウワサ話
文字数 1,369文字
「わ〜い。わ〜い。お城だ。お城。楽しいなぁ。広いお城をいっぱい探険できるのって、童心に帰る感じでワクワクするよねぇ」
兵士訓練所を出て、僕らは一階のろうかを歩いていた。
ボイクド城は大きくわけて、四角い本丸、その四すみの塔。本丸をかこむ二の丸と、さらにここにも四すみの塔だ。
とにかく大きなお城なんで、あっちにもこっちにも人がいる。
僕らは一階にある兵士のための食堂や、ふだんは
やっぱりね。
情報はRPGの基本だって思うんだよね、僕。
「知ってるか?」
出た! 知ってるか?
人ごみに戻ってきた感がこみあげる。
「え? 何をですか?」
「この国の四方の国なんだがな。北がウールリカ。南がミルキー。東が武闘大会のあるヒノクニ。ヒノクニは別名サムライ国とも呼ばれてる。西にはサンドール。もっとも、ヒノクニとサンドールはあいだに海があるんだけどな」
ふうん。そうなのか。
僕は魔法の地図を出して、配置を確認した。僕の地図は全体の左側半分の中央あたりにしか色がついてない。まだまだ行ってない場所のほうが多いんだ。世界は広いなぁ。
「知ってるか?」
また知ってるか!
嬉しいっ。
「何をですっ?」
「じつは、この城の地下には誰にも開けることができない謎の扉があるらしいんだ」
そう言えば、サンディアナでもその扉のこと言ってる人がいたな。時間を超えられる人だけが入れるとかなんとか。
それにしても、お城で扉。しかも地下。
それって、シルキー城にもあったようなやつかな?
シルキー城は王族なら開けられたけど、さらに奥にやっぱり謎の扉があったよね。なかにすごく強い魔物がいる気配があった。
「ミルキー城の近くでは、たまに一角獣が見かけられるんだってな。子どもかキレイな姉ちゃんしか近寄れないっていうぜ」
「聞いた話なんだけど、夢の巫女って、すごい変人なんだって」
そうなんだ……。
スズランさんみたいな美少女を期待してたのに。
「予言の巫女の予言は外れたことがないんだってな。あまりにも予言が当たるから、父王に恐れられて、子どものころにどこかの塔に幽閉されたって聞いたことがあるぜ」
ふうん。夢の巫女は変人で、予言の巫女は塔に幽閉か。ラプンツェルみたいだなぁ。
巫女の話はもう一個あった。
「予言の巫女はウールリカの王女なんだってよ。ウールリカの王宮は魔物の襲撃を受けたって話だけど、大丈夫なのかな?」
う、うーん。幽閉の上に魔物の襲撃か。あんまり大丈夫そうじゃない。
「この街には有名な発明家がいるんだが、なんでもカジノによく入りびたってるらしいぞ」
カジノ! そうだった。この街にはカジノがあった! あとで行かなくちゃ。
「義のホウレンと裏切りのユダは、もとは人間だったんだってね。親友だったらしいんだ」
「義のホウレンと裏切りのユダって、魔王の四天王ですよね?」
「そうだよ」
「なんで人間が魔物になってしまったんですか?」
「さあ、そこまでは知らない」
うーん。ユダは兄ちゃんだけど、気づいたら魔王軍のなかで、まわりのやつらにユダって呼ばれてたって言ってたっけ。
なんか変だなぁ。
ユダは兄ちゃんがこの世界に来るよりも前から存在してたっぽいんだけど……?