第328話 お母さん戦!4

文字数 1,235文字



 わあっ。炎のオーロラだぁー。
 キレイだなぁ。
 すごい。すごい。

 あっ、見とれてる場合じゃなかったぞ。

 火炎が風に乗って、村人たちをなでる。
 プチプチプチプチ、プチトマト!
 プチ。プチ。
 村人たちは火の粉をあびて失神した。

「なんだったんだ? 今の?」
「馬車のなかからでしたよ」
「ふえ子や。ふえ子が火ィ吹きよったで」

 なるほど。たしかに、ふえ子はフェニックスの子どもだ。だからこそ、略して、ふえ子。
 火炎ブレス攻撃はできる。

「そうだった。前も助けてくれたんだっけ」
「ありがとう。ふえ子」
「ピ〜ピ〜!」

 よし。村人が一掃された。
 これでなんとか、チャンスはできた。
 でも、泣きマネされたら、また動けなくなるんだよな。どうしたらいいんだろう?

 蘭さんが冷徹な眼差しで指示を出す。

「前衛をバランからケロちゃんに交代。ケロちゃんは自動発動で石化攻撃できる。さっきから見てたら、薔薇は必ずターン始めにかかってた。きっと、ケロちゃんの自動石化も発動する」
「あっ、そうだね。でも、必ず効くわけじゃないし、ターゲットを選べないよね? お母さんを狙えないんじゃない?」
「そのためには、村人を毎ターン片づけとかないと」

 ふえ子はNPCのようで、いつも戦ってくれるわけじゃない。僕らのピンチを見かねたときにだけ、技が出るようだ。子どもだから、自分で技をコントロールできるわけじゃないんだろう。
 ふえ子にばっかり頼ってはいられない! 僕らでなんとかしないと。

「スタンさえかからなければ、やれるんだけどねぇ……」
「スタンですよね。やっかいだなぁ」

 逆に言えば、僕が泣きマネをおぼえたあかつきには、とても役に立つ技なんだけど、敵にやられると、ほんとに困る。

 遠くのほうから、ワレスさんの声が降ってきた。魔法で心の声を遠くに伝える、心話ってやつのようだ。

「おまえたちに加勢してやりたいが、今はこっちを食いとめるので精一杯だ。スタンはアルテマハイテンションで無効化できる。“ためる”を使えるメンバーで乗りきれ」

 おおーっ。ありがたい助言。

「ためるは戦士の職業スキルだよね。全員、使える」
「そうですね。特訓のときに全員、戦士にはなったから」

 モンスターたちも職業のツボを使って、みんな戦士はおぼえた。
 なので、ためるは使える。ただ問題は“ためる”前に泣きマネされると、テンション上がる前に金縛りになってしまうことだ。
 アルテマハイテンションになるためには最低でも四回、ためなきゃいけない。素早く、四回もためることができるメンバーは限られてる。僕と蘭さん、はねるを使ったぽよちゃんくらいか。

 蘭さんが言った。

「じゃあ、前衛は僕、かーくん、ぽよちゃん、ケロちゃんで。全員でテンションをあげていきましょう!」
「わかった」
「キュイ……」
「ケロケロ〜」

 相談してるそばから、いきなり、アンドーくんのお母さんは泣きマネを使った。
 またターンのっとられた!
 こんなんで、ほんとにアルテマハイテンションまで到達できるのか?
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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