第73話 早く就労したいから、がんばるフェニックス狩り

文字数 723文字



 今日と明日の出会うころ、僕らは神殿を出発する。

「お兄さま。お気をつけて」
「うん。行ってくるよ。アンドー、神殿の守りはよろしく」
「お任せください」

 スズランちゃんや安藤くんに見送られて、ガラガラと馬車は行く。でも、まだ馬車のなかにはクマりんだけだ。レベルが上がるまでは、なかでじっくり育てないと。

「夜明けまでにちゃんと、崖のとこまで行けるかなぁ?」
「急ぎましょう。今から六時間ってとこですね」
「六時間もあれば、まにあうやろ」

 出現モンスターも途中までわかってるから、よっぽど想定外のことが起こらなければ時間内につく。神殿から崖までの所要時間は約四時間と聞いていた。

 ゲームの利便性のためだろうか。
 なぜか、聖女の塔までは旅人の帽子で行くことができた。
 見まわすけど、やっぱり猛はいない。
 どこ行っちゃったのかなぁ? 猛。
 また会えるかなぁ?
 急にいなくなって、さみしいよ。

「この塔、けっきょく、なかには入らなかったね」
「きっと、ここも今の僕らが行くべき場所じゃないんです。神様がちゃんと見守って、導いてくださるんです」

 うん。まあ、そういう言いかたもできるかな。まちがったルートに行くと話の進行が狂うからね。

 しょうがなく、夜の森のなかを進んでいく。東へ、東へ。

 夜の森は不気味だなぁ。
 ホウ、ホウと聞こえてくるのはフクロウかなってわかるけど、ときどき、怪物みたいな声が「ギエーッ」とか叫んで遠ざかっていく。

 こ、怖い。
 木の枝が風にゆれてガサガサ音を立てるし……って、うん? 変だぞ。
 風なんて吹いてないんだけど?
 じゃ、じゃあ、なんで揺れるんだ?
 オバケか?
 怖い!
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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