第159話  ブタさんを怒らせてはいけません

文字数 834文字



「このブタやろうー! 母ちゃんを返せぇー!」

 ああ、ナッツがとびこんで行っちゃったよ。ここはもう、しょうがない。

「アンドーくん。僕が一人で追いかけるから、アンドーくんはぽよちゃんたちをつれて隠れてて」
「えっ? でも」
「全滅だけはさけないと。僕にもしものことがあったら、アンドーくんがこのことをギルドに伝えて」

 僕はミャーコポシェットごと、ぽよちゃんをアンドーくんに渡した。
 へへへ。これで戦闘に倒れてもお金をとりあげられないぞ。

 僕はナッツを追いかけて室内に入った。アンドーくんが心配げな顔でろうかに残る。時間が経過してるから、隠れ身がもう使えるはず。これで、アンドーくんと、ぽよちゃんと、たまりんだけは無事に逃げられる……って、たまりんがついてきちゃったんだけど!

 でも、もうアンドーくんから離れすぎてしまった。隠れ身の範囲に入ってない。しょうがないから、そのまま、グレート研究所長の前まで走っていった。

 グレート所長は怒り狂ってる。
 ブタにブタって言うと怒るのか。

「な、な、な……なんだとォ? この小僧がぁ。わがはいが醜悪なご面相のくそブタやろうだとォ?」

 えーと、ナッツはそこまでは言ってなかったけど……。

「ゆるさーん! きさまだけは許さんぞよ。絶対にゆるさーん! ゴーレムだ……出でよッ! ゴーレム!」

 グレート所長は檻の扉をひらいた。
 なかからゴーレムが這いだしてくる。
 立ちあがると五メートルはあった。このお城は天井高いからそれでも余裕あるけど、京都五条の僕の自宅なら、天井に穴があいてる。

 レンガのような色合いの石の巨人。
 ゴクリ。これは、強い……。

 うおーッと叫びながら、巨人は両腕をふりあげた。

 こうなれば戦うしかない!

「たまりん、ナッツ、行くよ?」
「やってやるぜ!」
 ゆら〜り。

 身がまえる僕らの前にテロップが流れる。
 ジャジャーン、ジャーンと派手な戦闘の音楽も高まった。


 グレート研究所長が現れた。
 ゴーレムが現れた。


 あッ? 所長もコミなんだ?
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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