第203話  地下にも行ってみる

文字数 956文字



 お城と言えば地下。
 地下牢や、ぬけ道だ。
 地下には男のロマンが隠されている。
 光るツボが一番たくさん置かれてるのも、たいてい地下だし。

 ボイクド城の地下は迷路みたいに広かった。これは、なんかストーリーの進行によってはダンジョンにもなりそうなふんいきだ。
 万能のカギ(鉄格子)を持ってるんで、一個ずつ鉄格子をあけて、なかへ入ってはツボを割る。

「わ〜い。小さなコインだ。もうだいぶ、たまってきたよ。あっ、こっちのツボには力の種が」

 僕はつまみ食いで数値あげられるんで、種は使わずにミャーコポシェットに入れる。あとで、ぽよちゃんに食べさせよう。

 たまにモンスターが隠れてるから用心が必要だけど、ツボ割りは楽しい。

 ツボに隠れてるモンスターは、ツボカリンっていう、ツボを背負ったタコ足のスライムみたいなやつだ。ワンパンで倒せるくらい弱い。
 倒すと、まれに『へんなツボ』を落とす。これが使用方法のわからない謎のアイテムなんだよなぁ。まあ、いずれ何かの役に立つであろう。
 竜の岬で、コイツによく似たタコツボってモンスターがいたけど、あいつの親戚だろうか?

 かなり奥まで迷いこんだとき、急に見張りのついてるろうかがあった。見張りは兵隊じゃなく、黒いローブを着た魔法使いだ。

「これよりさきには、どなたも」
「入ることはまかりなりません」
 二人の魔法使いが交互に言う。

 しょうがないので、二人のすきまから奥をのぞいた。
 あるある。扉だ。
 シルキー城にあったのとよく似た大きくて、いかにも重大な秘密を隠してそうなやつ。
 これか。これが時間を超える人しか通れないっていう謎の扉だ。
 ゾクゾクするなぁ。

 でも、まだ今は行くべき場所じゃない。いずれ、そのうちに……なんだろうな。

「じゃ、見るもの見たし、行こうか」
「そげだね」

 くるっと一回転して、僕は地上に戻ろうとした。
 そのとき、僕は気づいた。
 牢屋のなかに誰かいる。

「あれっ? 囚人かな?」
「えっ? どこに?」
「ほら、あそこ——って、変だな。さっきは人が座ってたんだけど……」
「かーくん。オバケでも見たんじゃない?」
「ギャー。やめてよぉ。暗い場所でオバケとか言わないでよねぇ」

 それが身の毛もよだつ恐怖の始まりだと、僕はまだ気づいていなかった……なんちゃって。言ってみたかっただけぇ。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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