第375話 イケノくん戦!2

文字数 1,373文字



 とにかく、今は仲間の一人がいないことにだけかまってはいられない。

「じゃあ、後衛は、ぽよちゃん、たまりん、アンドーくん……もう一人は誰にしよう」

 スズランやダディロンさんはNPCだから頭数に入れなくてもいいとして、ケロちゃん、シルバン、モリーと残っている。
 このなかで後衛向きなのは、モリーかな? モリーならスズランにでも変身してくれたら、たいていの魔法が使えるようになる。

「モリーに頼もうかな」

 僕が告げると、急にケロちゃんがあばれた。

「ケロケロっ! ケロー! ケロケロ……ケロケロ……」

 あっ、傷ついたようだ。
 ヤダヤダ。ぼくも戦うよ。ぼくもみんなといっしょに戦うよぉー!——と言ったに違いない。
 なんか、ケロちゃんの言葉はわかりやすいなぁ。

 そばで見ていたワレスさんが笑った。

「こんなときだというのに微笑ましいヤツらだな。カエルには水の結界を使わせればいいじゃないか。水の結界は水属性魔法なら攻撃だけじゃなく、補助や回復魔法の効果も高めてくれる。しかも、特技だからMPを使わない」
「回復?」
「何を言ってる。回復魔法は一部の例外をのぞき、ほとんどが水属性だろ?」
「あっ、そうなんですか」
「のんきなヤツだ。では、ゴーレムと森スライムはこっちに貸してくれ。こっちのNPCとして戦ってもらう」
「わかりました」
「ケロ〜! ケロ〜!」

 ケロちゃん、喜ぶなぁ。
 可愛いんだけど、困った子だ。

 ワレスさんたちはモリーとシルバンをつれて、部屋の壁ぎわまでさがった。そののち、大まわりでイケノくんの背後にまわっていく。
 途中で姿が消えたから、隊のなかの誰かが隠れ身を使えるんだろう。

 じゃあ、気持ちを切りかえて、戦闘だ。

「ロランとアンドーくんにはツライと思うけど、イケノくんとロランのお母さんは、あとで手当てすれば、もとに戻る。ナッツのお母さんほど長いあいだ、悪い魔法にかかってたわけじゃないから、イケノくんも人間に戻れると思う」

 ロランとアンドーくんはうなずいた。

「そうですね。今は戦いましょう。迷っててもしかたない。お願いがあります。最初、前衛をクマりんではなく、ケロちゃんにしてください。ケロちゃん、母上を石にしてくれますか? 石化なら即効で戦闘不能だし、あまり痛くもないと思うので」と、蘭さんが頼みこむ。

「そうだよね。お母さんに痛い思いさせたくないよね。じゃあ、ケロちゃん、ロランのお母さんを石化させてね」
「ケロ!」

 了解!——と言った。
 わかりやすい。

 よし。戦闘開始だ。
 バランの薔薇が舞い、続いて、ケロちゃんの自動石化攻撃!
 残念。ヤドリギのひざこぞうをペロンとしたが、効果なかった。
 自動発動はターゲットを選べないことが欠点だ。ボスには効きめないからなぁ。

「ぽよちゃん。聞き耳お願い!」
「キュイ……」

 真夜中なんで、まだ寝てるぽよちゃん。
 パジャマセットでお耳ピクピクー

「えーと、悪のヤドリギの行動パターンは、ウソをつく、憑依、あやつる。それに、のっとる。ああ、仲間呼びもする。多彩だなぁ」
「ウソをつくって言うのは知りませんが、やっかいな技が多いですね」
「だよね。レベルは30。あっ、でもHPがやけに低いなぁ。2000って、ボスにしては少ないよね」

 レッドドラゴンはHP30000だった。ケタが一つ違う。
 これなら、倒せない敵じゃない……かも?
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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