第133話 つまみ食い発動!

文字数 1,050文字



 コウモリ男の口からのぞく細い牙。
 あれか。あれが吸血のための道具なんだな。
 チクンとかまれると注射されたていどの痛みはあった。蚊と違ってかゆくはならないけど、注射は嫌いだ。

「す、吸われたぁ。立ちくらみする。貧血だぁ。なんで三匹とも僕ばっか狙うんだ?」
「一人に攻撃を集中して倒すつもりだない?」
「うーん。意外とかしこい」

 血を……血を返してくれェ。
 クラクラする。

 僕は無意識に、とられた血を吸いかえす妄想をした。コウモリ男の肩のとこにストローをつっこんで、チューチューするのだ。
 すると、ちょっと、めまいがおさまった。プチっと力が湧いてくる。
 変な気はしたけど、あんまり気にせず、次の攻撃に移る。

 巻きで行こうで素早くなったぽよちゃんの二回攻撃!
 コウモリ男CとDのあいだをかけぬけたと思うと、妖精の爪がサッ、サッと青い軌跡を描く。二体倒した。

 残る一体もアンドーくんの短剣による通常攻撃で失神。

 勝ったよ。なんとか。
 僕は薬草をかじった。
 MP保存のためと、なんとなく魔法より鉄分を補給できそうな気がしたから。

「大丈夫ですか? 銀行員さん」
「あ、ありがとうございます。もう大丈夫です。ギルドの職員は金庫室に隠れているんですが、まだ逃げ遅れてる人がいて、待っていたんです」
「受付のお姉さんはもうすぐ来ると思います」

 と、話してるところへお姉さんが来た。僕らの戦闘が終わるのを待っていたのだ。

「ほかにも、まだ来てない人はいますか?」
「ルベッカさんが」
「情報屋のルベッカさんですね?」
「武器屋のソウレさんもまだだが、あの人はもと冒険者だから心配いらないと思う」
「わかりました。あっ、そうだ。今、貯金ってできますか?」
「できますよ」
「じゃあ、百万預けます」
「百万ですね。たしかにお預かりしました。かーくんさんの貯金が二百五十万円に達しました。オリハルコンのよろいをさしあげたいのですが、現在、非常時なので支度がまにあいません。あとでまた、とりにきていただいてよろしいですか?」
「はい。わかりました」
「では、これが引き換え券です」

 引き換え券っていうか、メモ用紙にてきとうに銀行員さんが走り書きしたやつだ。紙を渡されて、僕はそれをミャーコポシェットに入れる。

「では次は貯金が五百万円に達したときに、創世の剣をさしあげます。お楽しみに」
「はい。楽しみです」

 創世の剣かぁ。
 なんかすごく強そうだなぁ。ワクワク。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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