第266話 衝撃の職業スキル

文字数 1,509文字



 せっかく都に来たのに、まだ抽選もしてないし、カジノにも行ってない。
 ちょっと行ってみたいんだけど、あんまり遅いとアンドーくんたちに心配させてしまうかもしれない。夕食作って待ってるって言ってたしね。

 僕らは急いでお城の裏庭に帰った。
 王都は広大だからだろう。
 移動魔法の拠点が、ギルド前と王城前の二ヶ所あるのだ。ありがたい。
 さっと魔法で帰って、裏庭のわが家へ入る。

「ただいま〜」
「ただいま」
「お帰りなさい。お兄さま」
「かーくん。ロラン、お帰り」

 アンドーくんの手料理はなかなかのもの。すいとんの入った味噌汁と、天ぷら。ほかほかの五目ご飯だ。日本食だなぁ。

 みんなで夕ご飯をかこっていたときだ。
 外から玄関の扉をたたかれた。
 誰だろうと思っていると、入ってきたのはワレスさんだ。
 はぁ。いつ見てもカッコイイなぁ。美青年だ。

 ワレスさんは鋭利な刃物みたいな青い瞳で、つかのま僕と蘭さんをながめていた。

「なるほど。見違えるほど強くなったな。おまえは、とうぶん、今日と同じカリキュラムをこなしていればいい」というのは、僕に言ったんだろうな。
 蘭さんに対しては何も言わなかったから。

「ところで、銀晶石の巨兵との戦いぶり。悪くはないが、せっかく仲間の数が多いのに、あまり役に立っていないな」

 居間に入ってきて、ソファーに腰かけながら、ワレスさんは言う。
 戦いぶりって、見えたんだろうか?
 見えたんだな。
 いいなぁ。ミラーアイズ。

「そうですね。いつも同じメンバーでの戦いになります」と、僕は従順に答える。
 蘭さんはワレスさんのこと許してないからなぁ。しゃべらない。

「おまえたちのなかには、後衛援護スキルを持っている者がいないのか?」
「後衛?」
「援護スキル?」

 僕と蘭さんの声がそろった。
 さすがに蘭さんもしゃべったか。
 でも、質問するのは僕。

「なんですか? それ」

 ワレスさんは肩をすくめた。
 ああ、こういう仕草、似合うよね。
 僕も美青年に生まれたかった。

「やっぱり知らなかったんだな。これは冒険者というより、軍隊での戦法になるからな。職業のいくつかは、マスターすると後衛からの援護が可能になる。馬車のなかから魔法やスキルを使えるんだ」
「えッ? それじゃ、パーティーの行動人数が増えるってことですか?」
「ああ。ただし、後衛は補助と回復の魔法やスキルしか使えない。攻撃ができるのは前衛だけだ。例外的に弓使いは後衛からも攻撃できる」

 いやいや。攻撃ができなくたってスゴイよ。だって、今日の巨兵戦のとき、メンバーの誰かが後衛援護できてれば、石化されたぽよちゃんを治せてたってことになる。
 それに、たまりんは詩人だけど、詩人は補助スキルしか覚えないから、外では使いにくいんだよね。

「どうやったら、その後衛援護スキルってやつを覚えられるんですか?」
「詩人、踊り子、遊び人をマスターすると、詩聖という職につける。詩聖のマスタースキルが後衛援護可能だ。そのほかの職業からだと、盗賊、武闘家、魔法使いをマスターして、その上の弓使いになるかだな。弓使いのマスタースキルも後衛援護可能だ。弓使いの場合、個人によっては武闘家のかわりに戦士、魔法使いのかわりに僧侶でもなれるらしい」

 僕は急いでスマホにメモった。書き書き書き……。

「たまりんが今、詩人だから、たまりんにぜひ覚えてもらおうかな」
「魔法使いなら、僕やアンドーもなってますよ。アンドーは今、武闘家だし」
「そうだね。なれる職業は個人で違うから、みんなが覚えられるわけじゃないと思うけど」

 後衛援護スキルかぁ。
 それがあれば、ステータスの低いモンスターや女の子が、馬車のなかから戦えるようになるね。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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