第65話 悪役安藤くん

文字数 811文字



 さっき、ぽよちゃんが僕の素早さを上げてくれたんで、今回のターンも僕が三番め。
 まあ、と言っても、僕にできることは「破魔の剣〜」しかない。
 これで三回めなんで、それなりにダメージは蓄積してるはずなんだけどな。

 僕は自分のターンが終わったあと、ぽよちゃんに指示してみた。
「ぽよちゃん。蘭さんに魔法かけてみて。できる?」
「キュイ」

 ぽよちゃんはギュッと目をとじた。
 ためるとどう違うのか、正直わからない。
 でも、ちゃんと魔法はかかったらしかった。うっすらと蘭さんにオーラがつく。
 ステータス向上系の魔法がかかると、ほんのり体が光るようだ。
 たぶん、僕も光ってるんだろう。
 これまで、蘭さんの“みんな、がんばろ〜”のあと、なんとなく、みんなが赤く光ってる気がしたのは気のせいじゃなかったか。
 たぶん、攻撃力が上がると赤、素早さだと青くなるようだ。

 えっ? 後出し設定だって?
 ち、違う。断じて……違うよ?
 いいじゃん。僕の夢なんだから。

 僕らのターンは終わりだ。
 安藤くんはどうするのか?
 さっきまで呪文詠唱しかしてなかったけど。

 見ていると、タタッとふみこんでくる。
 やっぱりそうだよね。
 攻撃しないことにはバトルが終わらないし。

 でも、安藤くんの狙ったのは僕じゃなかった。素早さ上げの魔法がかかってない三村くんだ。
 あッ! 安藤くんの短剣が三村くんの右目を狙う。
 三村くん、鉄の盾で防御しようとするけど、あれじゃまにあわないよ。

 すると、そのときだ。
 猛が足元の小石をコツンと足で蹴りあげた。小石は弾丸のように飛んで、安藤くんの短剣を握る左の手首に命中した。
 すっかり忘れてたけど、そうだった。
 いちおう猛も僕らの戦闘要員だっけ。

 安藤くんの狙いはそれて、三村くんの頰をかるく刃先がすべる。
 安藤くんは、あわてて、とびのいた。

 僕らの番だ!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み