第245話 ミルキー城攻略のために

文字数 1,041文字



 近くに小川が流れていた。
 水音って心地いいなぁ。
 風が樹木の葉をなでる音も好きだ。
 ロッジのなかには暖炉があって、そこで湯をわかしたり、煮物の鍋をかけることなんかはできる。
 外にはパンやピザを焼くような窯があり、(まき)をくべて豪快に肉や魚を焼くことのできる場所もある。
 ロッジの裏側に、離れになったお風呂場があった。これも薪をたいて湯をわかす昭和風のやつだね。

 なんか、ガスや電気になれて、なんでも指一本でスイッチをひねればできてたけど、こういうのもキャンプみたいで楽しい。

「炊き出しなら、わが作うよ。明日は市場も行きたいが。野菜はそのうち自給できぃとして、肉や魚や卵は買ってこらんとねぇ」

 アンドーくんが言うので、僕はそくざに食費として十万円を渡した。
 とは言え、今日のところは食材もないので、庭師の人たちのための食堂へ行く。厨房の裏口から入っていける小さな食堂だ。

 食後はロッジに帰って部屋割りを考える。
 ロッジのなかは入ってすぐに居間があり、そのまわりに四つ個室がある。居間の上にはロフトがあった。
 今日のところは人間の数が四人だから、個室をそれぞれ使えるけど、三村くんが帰ってきたら、部屋が一つ足りないなぁ。ロフトで寝てもらうしかないか。
 これ以上、人間が増えたら……雑魚寝かな?

 そうこうしてるうちに、蘭さんが帰ってきた。

「お帰り。蘭さん。おつかれさま。夕食、もらってきてあるよ。食べる?」と言ったあと、僕は蘭さん、スズランに続いて室内に入ってくる人に気づいた。
 またもや、僕のヒーローだ!
 ギャー! ぽよちゃんお腹にのっけて、モフモフしてたとこ見られたー!
 ぽよぽよ同士のグルーミングだと思われただろうか?

 ワレスさんは僕の挙動には不問で、クールに告げる。

「悪いな。勇者には話したが、大事な用がある」
「はい! な、なんでしょう?」
「おまえたちの実戦での戦いぶりをクルウから聞いた。そのレベルにしては、かなりよくやってるほうだと思う。何より装備品の質が高いな。ただ、現状、装備品頼みなところがなきにしもあらずだ」

 うん。まあ、そう言われると耳が痛い。確実に急所をついてくる。強い人は言葉まで鋭いなぁ。

「そこで、おまえたちには集中訓練で鍛えてもらう。作戦開始までに、できるかぎり強くなれ」
「えっ? どうやってですか?」
「それぞれに課題を出す。最終日に試験をし、それに合格できたら出発だ」
「課題、ですか」

 宿題から解放されて、はや何年?
 課題かぁ。小銭拾いならいいんだけどなぁ。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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