第231話 さすがはもと貿易商

文字数 1,523文字



「ポルッカさん。じゃあ、僕らは去りますが、その前にお屋敷のなかを見学してもいいですか?」
「かまいませんことよ。一階にはお店や宿屋もございますからね」
「あっ、そうなんですね」

 僕らはポルッカさんやマルッカ、ムルッカに手をふって、大広間をあとにした。
 魔法が解けるときに何かが起こったらしく、馬車はいなくなってる。たぶん、屋敷の外なんだろう。
 戦っていたメンバーだけで、ろうかを歩いていく。

 さっき入れなかった二階の部屋には、ポルッカさんの寝室や人形を飾った部屋やドールハウスの部屋があった。人形だらけだ。
 ポルッカさんの寝室には、ポルッカさんの若いころだろうなと思える肖像画が飾ってあった。なんとなく面影がある。となりに立ってる男の人は、ポルッカさんをすてて、どこかへ行ってしまったっていう婚約者なのかなぁ?
 こんなのを飾ってるなんて、ほんとはポルッカさん、その人のこと、まだ好きなんだ。

 二階には人形製作できる道具のたくさん置いてある一室があった。
 それを見ながら、シャケがムニャムニャ言ってたけど、僕らは無視して一階へおりていく。

 うーん。ホールにおりると、玄関のすぐよこに店屋があった。それはいいんだけど……なんで? どうやって?
 カウンターに座ってるのが、ポルッカさんなんだよなぁ。

「い、いらっしゃいませ。何かお入り用ですか?」

 息きらしてるけど、大丈夫かな?

「あの、ポルッカさんですよね?」
「すみません。急なことでしたのでね。次からはバイトを雇っておきますわ」
「あ、そうなんですね」

 老体にムチ打ってるようで申しわけないけど、商品は気になる。なにしろ、すごい貿易商だったみたいだし。

「ここは何屋なんですか?」
「雑貨屋となっておりますわ」
「どんな品物があるんです?」
「品ぞろえはこちらになります」

 ここもお品書きだ。
 武器や防具はあんまりない。
 シルバーシリーズだ。
 武器はシルバーナイフとシルバーソードが置かれていた。ナッツにあげたシルバーナイフね。やっと呪いのついてないやつが店にならんだか。

 防具には、銀の盾っていうのがあって、防御力もまあまあ。魔法ダメージを10%だけ減らしてくれる。

「えーと。じゃあ、アンドーくんにシルバーナイフでしょ。クマりんにシルバーソードでしょ。あっ、ケロよんは何が装備できるのかなぁ? まあ、いいや。かぶとはないんですね。よろいも。盾だけかぁ。じゃあ、銀の盾四つ」
「あらまあ。たくさん買ってくれるのねぇ。ありがとう」
「あっ、ちなみにこの店ってギルドに加入してます?」
「もちろんですよ」
「じゃあ、20%オフでお願いします。僕、冒険者ランクA Aなんですよ」

 ふふふ。ダブルAに渡されるピカピカのバッジ。純金製だ。
 ミャーコポシェットから出してみせると、ポルッカさんは目を丸くした。

「あらまあ! 初めて見ましたよ。どおりで強いのねえ。それなら、お安くしますよ」

 へへへ。たっぷり寄付してるからねぇ。
 まあ、それでも、シルバーシリーズのなかで一番高い盾でさえ五千五百円だからねぇ。割引してもらうほどでもなかったんだけど。

 武器防具を買って立ち去ろうとしたものの、僕は見つけた。

「あっ! 天使の羽が売ってる!」
「はいはい。どんな状態異常でも治してくれる長旅には必須のアイテムですよ」

 これがさっきあれば、どんだけ戦いが楽だったことか。

「じゃあ、それ、百個ください!」
「百個……ですか? お一つ千円しますよ? 二割引きにしても、百個なら八万円しますけど?」
「なんだ。八万円か。じゃあ、二百個ください!」
「あらあらまあまあ。ほほほ。ありがとうございます」

 これでもう石化攻撃責めにあっても安心だー! どんと来い。石化!
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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