第236話 初の合成屋……の前に、雑貨屋と装飾品屋
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それにしても広いギルドだなぁ。
一階には受付、銀行受付、武器防具屋のほか、雑貨屋、そしてバーがある。
けっこうテーブル席の多いゆったりしたバーだ。
僕らはメンバー足りてるからしないけど、冒険者間で新メンバーを募ったり、雇いぬしを探すために登録できる冒険屋をかねているせいらしい。仕事斡旋所の受付も近い。
あっ、あれ? ダルトさんがいる。
変なおじさんが、変なおじさんと話してる。密談っぽい。かかわるとめんどうだから無視しとこう。
雑貨屋がある。
雑貨屋ものぞいてみようかな。
数量限定だけど、フェニックスの灰があった。一個二千円。お一人さま三十個まで。三十個買いました!
「あっ、妖精の涙も売ってる。MP回復してくれるアイテムだよね。買っとこ」
こっちはお一人さま六十個まで。
一個五百円。
もちろん、買った。
これでも九万円か。じっさいには二割引きだから七万二千円だ。
お金って、けっこう使えないもんだな。現実にくらべて、なんて贅沢な悩みだ。
さて、じゃあ、いよいよ合成屋だ。
僕らは二階へと上がっていった。
二階も広いぞ。
合成屋、預かり所、装飾品屋、情報屋、教会もあるし、魔法屋ってのがある。
魔法屋? それは聞いたことない店だなぁ。
鍛冶屋……は看板だけか。
ご用のかたはギルド裏口までって書いてある。
鍛冶屋か。剣を鍛えてくれるのかな?
数値がよくなったり?
まあいいや。合成屋に行かないと。
でも……装飾品屋は気になるな。
行ってみるか。
天使の羽飾り、売ってないかなぁ?
装飾品屋のなかは、まるで宝飾店のよう。きれいなものがいっぱいだ。
じっさい、宝石もたくさん置いてある。
奥のカウンターにすわった店員さんはおかっぱでメガネをかけた女の子。ストールを肩にかけて、アンティークショップの店主の風情だ。
「こんにちは。天使の羽飾り、置いてませんか?」
「天使の羽飾りは、ただいま一つしか在庫がございません」
「ください!」
「三万円になります」
たっけ……。
武器防具より高いんだけど。
買うけどね。
「ください」
「はい。三万円です」
「僕、ダブルAなんですよね」
「では二万四千円です」
とりあえず、天使の羽飾りはゲットした。ほかにも、なんかないかなぁ?
「おすすめの商品ってありますか? お金はいくらかかってもいいんで」
「そうですね。いろいろありますが、合成に便利なのは無効系ですとか、ダメージ軽減系ですよね。武器に合成するなら力を上げてくれるタイプ。装飾品として身につけておかれるなら、この精霊のアミュレットですね。即死魔法無効の効果と全ステータスプラス20がつき、戦闘時には『元気だしてね〜』の効果が毎ターン自動でかかります」
「元気だしてね〜って、どんな魔法ですか?」
「自動HP回復魔法ですね。魔法をかけておけば、5ターンのあいだ最大HPの10%ぶんがターン終了時にかかります。HPが満タンのときは、その戦闘のあいだだけ、最大値に加算されます」
わかった。リジ〇ネだ。
ファイナルな幻想ゲームに出てくる魔法ね。ボス戦のときにかけとくと便利なやつだ。
「じゃあ、それ、ください」
「一個二万円になります」
「十個ください」
あっ、店員さんの顔がひきつった。
「は、はい。十個ですね。あっ、ダブルAなんでしたね。二割引きで十六万円になります」
ここでは十八万四千円か。
店員さんの口調だと装飾品は合成素材に使えそうだから、もっといろいろ買っときたかったけど、とにかく何をどんなふうに合成できるかだよね。まずは合成屋に行かないと。
「あっ、そういえば、前に人魚の瞳っていうのと、月光の結晶って装飾品を買ったんだけど、これって、どんな効果があるんですか?」
「貴重な品物をお持ちですね。月光の結晶は最大MPを二倍にしてくれます。聞いた話ですが、星の結晶と合成すると、魔法使いにとって喉から手が出るほど欲しい装飾品になるそうです」
「へえ。そうなんだ」
「人魚の瞳は水の加護がかかります。水属性魔法を使用時の効果が上がり、敵からの攻撃魔法のダメージは半減します。これも聞いた話ですが、水中で息ができるようになるとか?」
「えッ? 水中で息が?」
「はい。そんなウワサですけどね。わたしは試したことないですよ?」
ううッ。あのナイアガラを超えるためのアイテム、これだったのか!
猛が来てくれたからいいけどね。
今さらわかっても……。