第153話 三階の亡霊

文字数 1,132文字



 装備品もとりもどしたし、次は四階だ。階段を探して歩いていく。
 すると、さっきの二階から三階にかけてあったのとよく似たプチホールと階段があった。
 その手前に何かの受付のようなカウンターがある。

「あ、あれ? アンドーくん。あそこに人が立ってない?」
「えっ? そぎゃんことああわけが——あったわ。ほんとに人が立っちょう」

 ただね。その人影は半分、透きとおってる! お、オバケだ……。

 オバケは男のようだ。
 それも若い男。
 金髪を七三分けになでつけて、まじめそうに見える。

「オバケ嫌い! 逃げるよ」と、階段にむかって走ろうとすると、オバケのほうが僕を呼びとめてきた。

「あっ、待った。待った。お客さん。怖がらなくていいから、行かないでください。二百年ぶりのお客さんなんだから」
「えーと……商売する亡霊?」
「そです。商売する亡霊です」
「オバケでしょ?」
「オバケです!」

 僕は逃げだそうとした。
 すると、どうだ!
 オバケがスウーっと僕の前にまわりこんで行く手をさえぎる。こ、怖い。取り憑かれるぅー。のっとられるぅー。ゾンビが感染(うつ)るかもッ?

「ゾンビじゃありませんし、伝染しません。取り憑いたり、のっとったりもしません」
「ギャーっ。心を読まれた!」
「いちいちリアクションの大きい人だなぁ。オバケ苦手なんですか?」

 あははと笑ったのは僕じゃない。
 アンドーくんだ。

「かーくんは怖がりだけんねぇ」

 いやいや。オバケだよ?
 ふつう怖いでしょ。

 オバケは僕を無視して自分語りを始めた。やたら押しの強い幽霊だ。

「私はですね。生前、ここで商売していたんです。このお城の住人でした。あのころはここも活気にあふれていて、とてもキレイなところだったんですよ。珍しいアイテムを購入するために、わざわざ遠くから訪れる旅人も多かった」

 ああ、長いやつだな。
 これは延々と続くやつだ。

「……手短かにお願いできないですか?」

 僕はお願いしたけど、オバケは聞いてるふうじゃない。気持ちよさそうに目をとじて、しゃべり続ける。

「この城は〇〇〇〇さまと〇〇〇〇さまが、ともにすごされるために設けた城だった。お二方は種族が異なったため、その境界にな。城を築いたんだよ」

 〇〇さまってとこの〇〇が、うまく聞きとれない。誰かの名前なんだとはわかるんだけど。霊なんで、波長にゆらぎがあるのかも。

「お幸せなお二方だった。臣下も皆、喜んでいたんだけどな——まあ、こうなってしまったことはしかたないさ。いらっしゃいませ。何かご入り用なものはありますか? 休憩所もございますよ」

 わーッ! 押し売りの亡霊だった!
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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