第354話 レッドドラゴン戦!5

文字数 1,108文字



 どうしよう。
 僕が倒れたら、このパーティーは全滅だ。ギガファイアーで僕以外のメンバーは一掃されてしまう。

 ということは、今のターンで僕らが倒しきれなかったら、レッドドラゴンはきっと僕を集中攻撃してくる。
 このドラゴン、ちゃんと計算して攻撃してるからだ。さっきのターンで雄叫びを使わなかったのは、それを使ってたんじゃ、次の僕らのターンに自分が倒されると気づいたんだ。
 まずは水の結界を張ってるケロちゃんを戦闘不能にしようと考えて行動した。

 コイツ、頭がいい。
 ちゃんと勝算のある行動を合理的に導きだして、それに従って動いてる。

 だから、ギガファイアーで倒しきれない僕をさきに消しておいて、ほかのメンバーはあとまわしでいいと考えるはず。僕がレッドドラゴンだったら、そうする。

 レッドドラゴンの力の数値がどのくらいなのか……。
 もしも、一撃で僕を倒せるほどの攻撃力を持ってたら、おしまいだ。

「かーくん。どげすうで?」
「……概算してみたら、あとちょっとのところで、このターンにレッドドラゴンを倒しきることはできないみたいだ。だから、今のターン、僕以外のみんなは猫車に入っててほしい。ダディロンさんも。僕は予定どおり、できるかぎり、レッドドラゴンのHPをけずる。ぽよちゃんは僕に『弱点つくよ〜』をかけて。それで、もしも僕が倒されたら、次のターンに蘇生魔法で復活させてほしい」

 そのときには重ねがけされた攻撃力や素早さの数値は、もとに戻ってる。それでも、二千くらいならレッドドラゴンを倒すことはできる。

「……かーくん」

 アンドーくんが不思議そうな顔で言った。

「うん。何?」
「なんで傭兵呼びさんで?」
「へっ?」
「傭兵呼びしたら、好きなだけダメージ与えられぇがね」
「あっ、そうだった!」

 チート技すぎて、まったく考慮に入ってなかったよ。ついうっかり、正攻法で倒す方法ばっかり思案してた。えへへ。

 そうだった! 僕には傭兵呼びっていう素晴らしい技があるんだった。まだ総額呼びは覚えてないけど、二万ダメージ与えるだけなら、ほんの二百万ほど、財布からとりだせばいいんだよな。

 僕はいそいそと、預かりボックスをミャーコポシェットからとりだして、なかから財布をとりだそうとした。招き猫の飾りのがまぐちね。

「ん? あれ? ない」
「えっ? なんで? さっき、かーくん。入れちょったがね?」
「うん。入れたよ。なのに、ないんだよ」
「手紙のあいだとかに、まぎれこんじょうだないの?」
「ないよ。どこにもない!」

 ええーッ! あれがないと傭兵呼びができないんだけど!
 地下牢でクピピコに小さくしてもらう前に入れといた五百億円も見あたらない……。

 なんで?
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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