第303話 特訓の成果
文字数 1,883文字
「じゃあ、合成も終わったことだし、宿舎に帰ろうか」
モンスターひきつれて、ぞろぞろ移動。可愛いモンスターばっかりつれてね。
「あっ、そうそう。シャケには、これあげとくよ。オリハルコンのよろいと、天使のアミュレットね」
「おおきに〜」
コイツ、もうまったく遠慮も恥じらいもない!
お金が人を変えていくぅー。
しかし、おかげで三村くんの着てた竜鱗のシリーズは、そのままセットでバランのものになった。バランの防御力も上がる。バランはくぽちゃんに負担がかかるから、重い重鎧は着れないようだ。したがってオリハルコンのよろいは着れないとわかった。
お城の裏庭のわが家に帰ると、今日もワレスさんが来て待っていた。
小屋に入ってきた僕と蘭さんを見て、「ほう」とうなる。
おっ? 今日は褒められるかな?
「成長めざましいな。怖いほどだ」
ぽん、ぽんと、僕と蘭さんの肩をたたいてくれた。えへへ。
「ロラン。おまえの新しい魔法は、いざというとき全員が使えるように、白紙のカードに複製しておけ。強い魔法を写すのには体力を要する。MPを50も消費する魔法なら、日に一枚か二枚がやっとだろう。早めに用意しておくといい」
あっ、蘭さんのことを名前で呼んだ。
もしかして初めてなんじゃないか?
蘭さんは誇らしげだ。
これで、ちょっとはわだかまりが減ったかな?
「後衛援護スキルは覚えられたか?」
「いえ。それはまだ。今日で一つ職をマスターしたので、あと二、三日あれば、みんな覚えられるかなと」
「二、三日後か。ちょうどいい。ミルキー城潜入もそのころになるだろう。出立前には最後の作戦会議を行う。今の予定では部隊をいくつかにわけることになりそうだ。おまえたちもパーティーを分割したときの戦いかたを練習しておくといい」
「了解です!」
サッと敬礼すると、ワレスさんは微笑した。
ぽよ〜。幸せ。
そのあとの数日、僕らはけんめいに特訓した。職業を次々マスターした。アンドーくん、蘭さん、スズラン、それに嬉しいことに、ぽよちゃん、たまりん、クマりん、ケロちゃんは後衛援護スキルをマスターした。
僕はミルキー城のなかで職業マスターすることを想定して、大商人は潜入時に転職すると決めた。そのかわりに僧侶と戦士をさきにきわめておいた。これで、潜入中は大商人と弓使いの上級職につける。
つまみ食いも続けたし、パーティーを強くするために、やれることはすべてやっておくようにというワレスさんの指示を受け、カジノと抽選も通いまくった。ツボや秘伝書をたくさん手に入れて、全員が『死なないでェー!』と『みんな、元気になれ〜』を覚えた。蘭さんのためにクィーンドラゴンの鞭も手に入れたしねぇ。
また、アンドーくんのアミュレットも、魅了の無効がなかったので、薔薇のコサージュを足してもらった。
三村くんが愛情、愛情と言うだけあって、薔薇のコサージュを使うと必ず大成功するようだ。
こっちは薔薇と蛇のアミュレットって名前になって、蛇の加護がかかった。
蛇の牙を前に合成してたせいで、薔薇のコサージュの毒無効効果と反応したらしい。毒や石化の攻撃を受けると、そのたびにHPとMPが最大値の10%回復する。
馬車も新しくなった。
というか、馬車が親子になった。
ザッフさんの改造から帰ってきた馬車を見て、僕らは絶句した。
最初の馬車はどこにも変化がない。
なぜなら、もう一台、新しい馬車ができていたからだ。
馬車というより、猫車だ。
トラじまのほろを張った車をひいてるのは、あの草原をかけまわっていたときの姿の猫リュックなのだ。もっとも、あのときほど体は大きくない。
猫車は最初の馬車の三分の一くらいのサイズだからだ。
「あんたら、小さいモンスターをいっぱいつれとるじゃろ? だから、こいつはチビモンスター専用車だ。小型のモンスターなら三匹で頭数一としかカウントされん仕様だ。もちろん人間も乗れるが、出入口が小さい。小柄な人しか入れんな。なかは広いから安心していい。人間なら四人乗り。小型モンスターだけなら十二匹乗れるぞ」というザッフさんの説明だ。
つまり、ぽよちゃん、バラン、クマりん、たまりん、ケロちゃん、モリーは新しい猫車に乗れる。シルバンだけが人間一人ぶんとカウントされるので、前からの馬車に乗せることになった。
これで人間または人間サイズのモンスターが古い馬車に、残り三人、新しい猫車には二人乗れる。小さいモンスターなら六匹まで増やしてもつれて歩ける。
いよいよ、明日はミルキー城へ旅立つ。
今の僕らなら、きっと悪のヤドリギも倒せる!
第六部 完