第30話 ミノタウルス戦! 2

文字数 887文字



 ミノタウルスはまだ動かない。ターン制もあるけど、こいつ、もしかしたら、かなり素早さの数値が低い。

 僕はちょっと腕ならしで、破魔の剣をふりかざしてみた。なんにも起こらない。

 三村くんが言った。
「あっ、あかん。あかん。装備品の魔法使うときは、その装備品の正式名称を言わな」
「えっ? そうなの?」
「破魔の剣〜って言うんや」
「わかった」

 あらためて。

「破魔の剣〜」

 あっ、出た。出た。
 小さな炎がミノタウルスの頭上に降った。
 大きさからいうと、火属性の一番低位の魔法って感じだな。
 たぶん、蘭さんの『燃えろ〜(^_^*)』と同じくらいの威力。
 ダメージは少なそうだ。遠距離から攻撃できるのは利点だけど。

「かーくん。ミノタウルスはHPが少なくなるほど、クリティカル率が上がるんです。だから、最初のうちは近距離攻撃して、ダメージが見えてきたら遠ざかって遠距離攻撃に切りかえましょう」

 さすが、勇者。リーダー。
 僕は蘭さんの命令に従うことにした。
 あっ、これって、あのゲームの“作戦変更”だ。“命令する”ってやつだな。

 そう言ってるうちにも、ミノタウルスのターンだ。ミノタウルスは大きな斧をふりかざして、ダダーッとつっこんでくる。

「わあッ!」

 僕はあわてて皮の盾を前につきだす。皮の盾がザックリ割れてしまった。
 えっ? この世界って武器の耐久性が設定されてるのか?

「かーくん。危ない!」

 蘭さんが手をひっぱってくれたので、ミノタウルスの斧は盾の表面をすべり、なんとかよけることができた。ミノタウルスの斧はそのまま地面につき刺さる。

 三村くんが叫んだ。
「おまえら、どいとれや。攻撃はおれが受けるさかい、HP減ったら治してくれ。ええな?」

 見れば、三村くんは鉄の盾を持っている。あれなら、なんとか斧をちょくせつ体で受けることはないだろう。

 そうか。僕はプリーストだもんな。
 みんなが死なないようにサポートするのが役目なんだ。

 冷や汗がよろいの下を流れおちていく。
 やっぱり固定のボスは強敵だ。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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