第331話 ミルキー城目前

文字数 1,241文字


 二日後。
 僕らはミルキー国の王都の手前までたどりついた。
 道々、ときどきモンスターは出たけど、その後はクラウディ村のような怪異はなかった。

 王都の城壁が見えてきたとき、馬車はいったん停止した。
 僕らは下車して、最後の作戦会議をかわす。

「予定どおり、ここから二手にわかれよう。おれたちは、らんらん姫を護衛して王城へ向かう。クルウの隊もな。かーくんの隊は別行動だ」と、ワレスさんに念を押されて、僕はうなずく。

「かーくん。気をつけてくださいね」
「うん。ロランもね」
「預かりボックスをこまめにチェックしましょうね」
「うん。何かあったら必ず報告するよ」

 僕らの猫車だけ残して、ワレスさん、蘭さん、クルウの馬車は城門をめざしていく。クルウの隊だけは城内に入ってから別行動に移る計画だ。そのほうが王城への侵入がたやすいからだ。

 僕らは完全に存在を隠した隠密部隊として、都に入る前にわかれておく。
 イケノくんは僕らについてきた。

 お城には秘密の地下道があって、蘭さんによると、それは町なかにつながっている。僕らはその秘密の地下道から、こっそり地下へ入っていく予定だ。

 蘭さんたちを見送った僕らは、城門をさけるために、ある場所にむかった。

「あっ。ここだ。ここだ。ほら、ここに扉がある」
「あっ、ほんとだね。上手に隠されちょうね」

 それは蘭さんといっしょにミルキー城の城下町から逃亡するために使ったぬけ道だ。
 RPGの宿命とは言え、ミルキー国には、あちこちに秘密の地下道があるなぁ。シルキー城にもあったし。お国柄かな?

「すでに懐かしい気がする。レベル1だったんだよなぁ。あのころ」

 スライムを木刀でポコポコ叩いてたころの僕。あのころにくらべたら、ずいぶん成長した。
 あんな形で追放された始まりの街が今、まさか魔王の四天王に占拠されてるとは、妙に感慨深い。
 ちゃんと追いだされたのには理由があったんだなぁ。レベル1でウロつけるところではなかったわけだ。

 城壁からちょっと離れた森のなか。
 小山の下にトンネルがあった。
 ツタや草で隠れてるけど、そこに扉がある。

 僕らは扉をあけてトンネルに入っていった。内部の配置というか、間取りは以前と同じなんだけど……出てくるモンスターが強い。
 と言っても、ミニドラゴンや見習いガーゴイルやコウモリ男だ。
 以前、サンディアナが襲われたときに出てきたモンスターたち。レベルがサンディアナのときより少し高いようだ。
 ここに住んでたスライムたちが大挙して逃げだすはずだよ。
 でも、今の僕らには、ぜんぜん敵じゃない。かるくけちらして進んでいく。

「ああ、楽しみだなぁ。このトンネルをぬけたら、やっと始まりの街を堪能できるんだぁ」
「かーくん。今は街のなかもモンスターだらけだと思うよ。気ぃひきしめらんと」
「うん。わかってるよぉ」

 とは言え、最初に見れなかったぶん、期待値が高まる。お城に行く前に、ちょっとは街ブラしたいなぁ。

 なんて、僕は思ってたんだけどね。
 甘かったんだよね……。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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