第230話 小さなコインを渡したら
文字数 1,744文字
「このたびは大勢のかたにご迷惑をおかけして、たいへん申しわけありませんでした。娘さんたちを街へつれてかえってあげてください。おわびに、みなさんが着ている服はさしあげますから」と、ポルッカさんは言った。
女の子たちはとくに害もなかったし、高価な衣服をもらって、かえって喜んでる。
「私が皆さんを送りとどけましょう」
クルウがそう言って、女の子たちをつれて出ていった。
出がけに、僕らに言い残した。
「では、私はこれで。次はボイクドの城でお会いしましょう」
僕らの戦いぶりを観察したから、ワレスさんに報告に帰るんだな。
「じゃあ、僕らも行きましょうか」と、蘭さんは言うんだけど、
「ちょっと待って! ポルッカさんって小さなコインを集めてるんですよね? コインを持ってきた人に珍しいものをプレゼントしてたって聞いたんですけど」
「ええ。そうですよ。可愛いものが大好きなんですよ」
「僕、小さなコイン持ってきました!」
「まあまあ。それは嬉しいこと」
えへへ。嬉しいのは僕のほうですよ〜
何を貰えるのかなぁ。へへへ。
「えっと、今、集まったのはこれだけです」
僕はミャーコポシェットを抱きかかえた。ミャーコが僕を見あげてから、プププっと小さなコインを次々に吐きだしていく。便利になった。うちのミャーコ。
僕は吐きだされてきた小さなコインを一枚ずつ拾いあげて、枚数を数える。
何枚たまったかな?
光るツボや宝箱からも見つけたけど、ほかの冒険者と違うのは、ミミックなどのコインを落とすモンスターから、必ずと言ってもいいほどドロップしてることだよね。コイン落とすモンスターは数も出る場所もかぎられてるしね。
「えーと、四十八枚! 四十八枚あります」
「まあまあ。がんばって、たくさん集めたのねぇ。世界中を旅しても、百枚集めるのがやっとなのよ」
「えっ? そうなんですか?」
僕の地図、まだ白いとこのほうが多いんだけどな。幸運マックス一歩手前のおかげかぁ。そういえば、ごくたまにだけど、小銭拾いでも拾うしな。
「えーと? かーくんさんでしたかしら?」
「はい。さんはつけなくていいけど、かーくんです」
「かーくんさんね?」
「えーと、まあ……はい」
「かーくんさんからは四十八枚の小さなコインを受けとりました。では、コイン五枚の景品、合成の台座をさしあげます」
「えっ? 合成?」
「合成をするために必ず必要となる台座ですわ。何度でも使えます。これは携帯用の台座ですから、旅の途中でも合成ができるようになります。ただし、合成には熟練の技が必要になりますから、くわしくは街の合成屋に聞いてくださいませ」
うわっ。しょっぱなから、めっちゃいいものくれた。
これは、ほかのものも期待値が高まる。
「では、かーくんさんから受けとったコインが十五枚になりました。戦士のブーメランをさしあげます」
「ブーメラン? 戦士なのに?」
「特殊な効果はございませんが、ブーメランって剣より攻撃力が低めでございましょう? これはそこを解消するために、力が強い殿方用に開発させた当社オリジナルの景品ですわ」
ほんとだ。で、デカイ……。
「力が150以上の人しか持てないのか。僕らのなかじゃシャケだけだね。でも、全体攻撃ができて、攻撃力が60か。破魔の剣より攻撃力高い!」
妖精のネイルや、精霊王のレプリカ剣のせいで、数値百以上があたりまえの気がするけど、ふつうに考えれば、まだ店屋に破魔の剣さえならんでないんだ。この強さで全体攻撃できるブーメランはスゴイ。
「じゃあ、このブーメランはシャケにあげる」
「おおきに。毎度、悪いなぁ」
なんか悪いと思ってるふうがない……。
「では、三十枚の景品、天使の羽飾りをさしあげますわ」
「えっ? 天使の羽飾り? 全状態異常を無効にしてくれるアクセサリー?」
「さようですわ」
「わ〜い。天使の羽飾りは全員ぶん欲しいよねぇ」
「この世のどこかに天使の降臨する塔があり、そこに行けば、モンスターがまれに落とすそうですわ」
そうなんだ。ありがたい情報までいただいた。
「では、次は五十枚受けとったときに、勇者のメダリオンをさしあげますわ」
「勇者の?」
「はい。誰でも、ちょっぴりだけ勇者になった気分が味わえますのよ」
ちょっぴり勇者……。
どんな気分だろう?